キャリアガイダンスVol.428
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水や空気のような存在であり、「特別ではない活動」が特活。だからこそ本来の意義を見失わずにる。特別活動は、そんな場面にもなると思っています。 冒頭で述べたとおり、特別活動は水や空気のような存在であり、そのこと自体が大きな価値です。一方、そのために大切さを見失っている場合もあるでしょう。本来、崇高な理念のあるHR活動なのに、プリントを配って終わり、学校行事も「楽しかった」で終わりではもったいない。 教科書がないからこそ、先生方の熱意や思いが色濃く反映されるのが特別活動です。学習指導要領全体が資質・能力ベースで書き換えられ、「キャリア・パスポート」(次ページ参照)も登場し、そしてキャリア教育の要と位置付けられた今、その意義をもう一度見直す絶好の機会だと思っています。す。特別活動では、個人のキャリア形成や自己実現においても、自分一人で考えるのではなく、小集団でもいいので他者との対話を経て、最終的に意思決定につなげていくことが大切です。 「本校の生徒に対話や話合い活動はできない。難しい」とこぼす先生は少なくありません。しかし、できます。なぜなら小学校時代はできていたから。自由な話合い活動や、さらにはそうした場の司会までできる力があるのに、教師や一部の生徒が必要以上に主導することで機会を奪われ、意欲を失っていく生徒がいるとするなら、それはとても残念です。実は私には反省しなくてはいけないことがあります。中学校教員時代、一部の生徒だけが常にクラスの中心にいることのないよう配慮をしていたつもりでした。しかし、どうしても、何でも器用な子や、反対に手のかかる子に目が行き、それ以外の子と比べ、声をかける量に差が生じてしまうのです。そのことで寂しい思いをしていた生徒もいたはずです。そうした寂しい思いをした生徒に、高校の担任が一生懸命声をかけ、「話合いに参加しよう」「司会をやってみないか」などと指導していただけるのは、とてもありがたいこと。中学校時代に見過ごされていた生徒の可能性や潜在能力が、高校の先生によって引き出されやもすれば過保護・過干渉な大人の与えすぎによってトレーニングの機会が失われがちな、これからを生きる若者に等しく求められる力です。 両者は重なる部分もあるのですが、混乱を避けるため小学校では「この45分は合意形成の時間」「次の45分で意思決定をしよう」と明確に分けてきました。高校でも今回の改訂では、内容⑴は合意形成を、内容⑵と⑶は意思決定を目指すことと整理しました(8ページ図1)。 ここで一点補足します。先ほど、特別活動には「集団活動」と「実践的な活動」という二つの特質があるとお伝えしました。その原則から言えば、個人の意思決定においても「集団活動」は必須です。そうなると、例えば、読書を通じて登場人物から影響を受け、自己と対話を深めながら「こんな生き方をしたい」という意思決定はどうなるのか。結論から言うと、個人で完結する以上、それは特別活動ではなく、例えば国語の範疇になるのでえるのです。内容⑵の健康安全や国際理解に関する項目についても、話合いを通して、各自が「食生活に気を付けなくては」「外国人に対してはこういうことに配慮しよう」など、実践への意欲付けと、今、何をすべきかに至ることが大事です。 HR活動では、「問題の発見・確認」「解決方法の話合い」「解決方法の決定」「決めたことの実践」「振り返り」といった学習過程(図1)を通じて、資質・能力を育みます。 そのなかで注目すべきは「解決方法の決定」であり、これは、自分たちの課題についての話合いを通じて、①集団として「合意形成」を進める場合と、②個人として自己の在り方生き方を「意思決定」していく場合の2つに分けることができます。 いずれも「決める」という、実生活で欠かすことはできない、けれど、や教科書がないからこそ、先生方の熱意や思いが反映される。今、特別活動の意義を見直すとき学習過程における集団での合意形成と個人の意思決定長田 徹(文部科学省/国立教育政策研究所)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Interview
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