キャリアガイダンスVol.428
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平成28年12月の中央教育審議会答申において提案されて以来、児童生徒が活動を記録し蓄積する教材として検討が進められてきた「キャリア・パスポート」だが、新学習指導要領を踏まえ、このたび下記のように目的と定義が整理された。「キャリア・パスポート」に記入すること自体が目的ではなく、あくまで児童生徒を成長させるための手段であることが明記されている。文部科学省は「キャリア・パスポート」の様式を例示しているが、これをそのまま使用するのではなく、各地域・学校の実態に応じて柔軟にカスタマイズすることが必要だ。また、「キャリア・パスポート」は小学校入学から高校卒業まで、学年、校種を越えて持ち上がることを踏まえ、次のような形式が基本となる。・各シートはA4判(両面使用可)に統一・各学年での蓄積は数ページ(5枚以内)文部科学省 国立教育政策研究所生徒指導・進路指導研究センター発行のキャリア教育リーフレットシリーズ・キャリア・パスポート特別編1~では、データに基づくポートフォリオの意義や実践事例などが紹介されている。▶https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html「キャリア・パスポート」は、小学校入学から高校卒業までの記録を学年、校種を越えて引き継ぎ、学びの振り返りや見通しに生かすもの。個人情報を含むことを想定し、キャリア・パスポートの管理は学校で行い、学年間の引き継ぎは教師間で行うことが原則となる。校種間の引き継ぎは、原則、生徒を通じて行う。入学式前後の早い段階での提出を求め、生徒理解に活用することが求められている。求められているのは、日常のワークシートや日記、手帳や作文などをそのまま蓄積することではない。これらを基礎資料として生徒自らが「キャリア・パスポート」を作成することにより、学年もしくは入学から卒業までの中・長期的な振り返りと、将来への展望や見通しができることだ。このたびの事務連絡では、「キャリア・パスポート」を活用したホームルーム活動の授業例も示された。「キャリア・パスポート」の内容を他者と共有する授業や、三者面談で使用するプレゼン資料作りを行う授業などの例がある。例示された様式。例えば、一年間の振り返りシートには、授業・行事・部活動等で心に残っていることや、自分が成長できたことなどをまとめ、将来の目標とそれに向けた具体策が記入できるようになっている。「キャリア・パスポート」で扱うのは、「学校生活全体及び家庭、地域における学びを含む内容」とされている。教科・科目のみ、学校行事等のみの自己評価票とならないよう、①教科学習 ②教科外活動 ③学校外の活動 の3つの視点で振り返り、特別活動を要としつつ各教科・科目等と学びが往還していることを生徒が認識できるように工夫することが大切だ。特別活動を要としたキャリア教育実践のための効果的なツールとなる「キャリア・パスポート」。2020年4月よりすべての小・中・高で実施することが、今春、文部科学省から各都道府県教育委員会等に事務連絡として発出されました(2019年より先行実施可)。そこで、各校の取組に向けて押さえておきたいポイントはどんなことか、まとめてみました。「キャリア・パスポート」 2020年度からスタート 「これまで」と「今」を、「これから」につなぐ生徒自身が変容や成長を自己評価するもの「キャリア・パスポート」とは中・長期的に学びを振り返り、将来を展望する取り組み方教科学習、教科外活動、学校外の活動の3つの視点で振り返る内容地域・学校に応じてカスタマイズを様式原則、学校で管理し、学年間の引き継ぎは教師間で行う管理と引き継ぎ生徒が「キャリア・パスポート」に取り組むに当たって、教師の関わりは重要だ。自己有用感の醸成や自己変容の自覚に結び付けられるような対話が重視されている。例示された「キャリア・パスポート」の様式には「他者からのメッセージ」の欄があり、生徒の成長を促す、相互評価や系統的な指導の工夫も期待されている。自己有用感の醸成や、自己変容の自覚につなげる教師の対話的な関わり●「キャリア・パスポート」の目的 小学校から高等学校を通じて,児童生徒にとっては,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり,振り返ったりして,自己評価を行うとともに,主体的に学びに向かう力を育み,自己実現につなぐもの。  教師にとっては,その記述をもとに対話的にかかわることによって,児童生徒の成長を促し,系統的な指導に資するもの。●「キャリア・パスポート」の定義「キャリア・パスポート」とは,児童生徒が,小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について,特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として,各教科等と往還し,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら,自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことである。  なお,その記述や自己評価の指導にあたっては,教師が対話的に関わり,児童生徒一人一人の目標修正などの改善を支援し,個性を伸ばす指導へとつなげながら,学校,家庭及び地域における学びを自己のキャリア形成に生かそうとする態度を養うよう努めなければならない。222019 JUL. Vol.428

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