キャリアガイダンスVol.428
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べる。同校の生徒が志望する職業や生き方には偏りが見られ、「道を早く決めすぎるが故に可能性を狭めている面もある」と指摘する。「根本にあるのが生の体験の不足。そこを補うのが、地域に根ざした探究活動に取り組む総合であり、就業体験や大学訪問などの特活」と久保先生は考える。 最後に松島先生は、こう語った。「中高一貫教育校には、地域の中でも高い志をもつ生徒が集まります。今後は、生徒たちのその志を6年間を通していかに実現させるかが、これまで以上に求められると考えています。〝志を実現する=難関大学に合格する〞ではありません。志を強くもち、目指す目標に向かって時に自分で、時に協働して、努力や挑戦ができる。特活は、そのような生徒を育てるために、実践的な取組ができる重要な要素と考えています」徒会活動、学校行事それぞれの目標を設定。年間の具体的な活動内容も挙げ、地域などとの連携やポートフォリオの活用といった活動の検証方法まで広げている(図3)。 また、これらを3年間の時系列で並べた「3年間のキャリア教育指導計画」も作成。「学校行事」、「各教科・科目」、「総合的な学習・探究の時間」、「特別活動(学校行事以外)」、「その他(キャリアノートの活用計画など)」の5項目を横断的に確認でき、どの時期に何を同時並行して行っているのかという横軸と、どのような流れで行っているのかという縦軸の両軸でキャリア教育全体を把握できるようになっている。 さらに、活動内容ごとに育てたい資質・能力(知・徳・体・志・美)のうちどれと関連があるか、どの教科・科目のどの単元に活きるか(もしくは、どの単元を活かすか)を、事細かに記した一覧を作成。漫然となりがちな特活の取組の目的や意義、位置付けが明確化されている(図4)。 こうして、6年間を通したプロジェクト巴峡のコンセプトを幹に、中学・高校それぞれのキャリア教育全体のカリキュラム、そのカリキュラムの柱となる各教科や総合、特活の全体計画、さらに活動ごとの意義・位置付けと、枝葉のように広がったカリキュラムは、今年度から本格的に実施されている。「カリキュラムは作ってからが本番。今後は、目の前の生徒の実情に合わせて軌道修正していくことが重要」と中学校教務部の物見 優先生。そのうえで、「今年度は特活のなかでも特に学校行事を学びを深めるフィールドワーク(実地実習)と位置付け、地域の人との連携などを積極的に行っていきたい。そして、地域の課題探究を行う総合と特活の連携をより強めていきたい」と続ける。さらに、高校総務部の中本真吾先生は、「生徒には、ただフィールドに出るのではなく、地域の方から困りごとを聞いたり、その道のプロに話を聞いたりと、一歩踏み込んだ生の体験をしてほしい」と加える。 また、進路指導主事の久保慎太郎先生は、「キャリア教育の意義は、自分が進みたい道は本当にこれなのか、という気付きが生徒自身にあること」と述実体験から学ぶ特別活動で、志を実現する力を付ける天根さん(3年・写真右)と坂口さん(3年・写真左)学校行事を通して、成長を実感しています 120周年だった昨年の文化祭で、実行委員長を務めました。以前は人に頼むのが苦手で自分で背負いこんでしまうタイプでしたが、文化祭を通して仲間と協働することを学び、自分自身も大きく成長できたと思います。(天根千晴さん) 学校行事や探究などを通して経験したことは、キャリアノートに記しています。何をやったかということやそのときに感じたことなどをかたちとして残せるので、今後は進路にも役立てていきたいです。(坂口昴輔さん)生徒の声三次中学校・高校(広島・県立)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Case1育てたい資質・能力教科公民理科カテゴリー知徳体志美科目現代社会物理基礎学年コンピテンシー知性、創造性、主体性徳性、多様性への理解力、真理追究力体力、忍耐力、逞しさ高い志、協働性、チャレンジ精神美しい言葉・姿勢、豊かな情操、伝統への誇り単元私たちの生きる社会現代社会と人間としての在り方生き方共に生きる社会を目指して物体の運動とエネルギー様々な物理現象とエネルギーの利用学期月1年2年3年活動内容14・6総合道徳教育31ー3LHR課題研究1・24ー11LHR課題研究14総合体育大会結団式14学校行事学習合宿特活ならびに総合の活動内容と「育てたい資質・能力」、「教科・科目・単元」との関連性一覧図4…強い関連…関連…双方向に生かす※学校の資料を基に、編集部にて作成252019 JUL. Vol.428

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