キャリアガイダンスVol.428
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己理解・他者理解を図っている。また、講演会や進路相談会などの機会には、対話力を深めるための「1・5往復の質問」を生徒に勧めている。 「他者に質問したら、回答をもらって終わりにするのではなく、もう一歩踏み込んだ質問や感想を返す。それによって、相手の話を表面的に捉えるのではなく、深く理解し内面化させる力を付けてほしいと考えています」(進路指導主事・田島博文先生) 文化祭や体育祭などの学校行事では、生徒主体の話合いによる意思決定や、役割分担しながら課題を乗り越えることを実践的に学ぶ。また、「経験が人を成長させる」との考えからボランティア活動を推奨しており、小学校での学習支援や地域イベントのサポートなどに多くの生徒が自主的に参加し、地域のなかで多様な視点を身に付ける。 生徒はこうして特活で育んだ力を土台にして、「総合」で展開される校外体験学習や課題探究活動、模擬議会やビジネスコンテスト参加などを盛り込んだ3年間のプログラム、および各教科における生徒参加型の授業に取り組む。 「特活での経験があるからこそ、学校外の多様な人とのコミュニケーションや協働へとステップアップすることができ、授業では生徒の積極的な発言によって学びを深めることにつながっているのではないでしょうか」(3学年主任・熊谷 透先生)のは、「生徒にどのような力を育むか」だ。「基礎的・汎用的能力」の4つの能力(A〜D)を具体化するとともに、「総合」「特活」「教科」のどの単元でどの力の育成を目指すのかを明確にして教員全体で共有し、日々の実践に活かしている。 同校のキャリア教育実践において、特活は〝土台づくり〞の時間との位置付けで、自己理解や人間関係形成に力を入れている。 「本校のさまざまな活動で効果的に生徒の成長を図るためには、まず、自分の考えを大切にし、他者とコミュニケーションするなどの基礎力が大切。そうした力の育成が特活の重要な役割の一つと考えています」(高坂教頭) 年度始めには、構成的グループエンカウンターのエクササイズを実施して自 さらに今後、HRを〝振り返り〞の時間としても強化していく方針だ。 同校では2年前より、学校行事や進路イベント、ボランティア活動などの後の振り返りに力を入れている。表現科の実習での導入を機に、教科の授業でも振り返りが浸透しつつある。生徒は振り返りシートへの記入を通じて経験を言語化し、次の行動にどう活かすか見通しを立てる(図2)。そして、シートの記録は、定期的にオンライン上のポートフォリオに入力し、蓄積している。 HRでは、こうした個々の活動記録を持ち寄って、さらに質の高い振り返りを目指す。今年度末のHR活動では、1年間を振り返って自己評価し今後を見通した内容について、クラスメイトとも共有することで新たな気付きや意欲を促す計画だ。 「『特活』『総合』『教科』それぞれの経験を積み重ね、そこからの学びを有機的につないで、人生のストーリーを描いていってほしいですね」(田島先生) 特活で育んだ土台を総合や教科に活かし、逆に総合や教科の学びを特活において確実な成長につなげる。「そうした往還によりキャリア教育の強化を目指す」と高坂教頭は語っている。特活で身に付けた基礎能力を教科・総合で発揮振り返りシートの例図2どの振り返りでも、同校キャリア教育の方針に沿った振り返りができるように基本項目を設定。「Ⅰ参加のねらい」「Ⅱ参加して気付いたこと・知ったこと」「Ⅲ参加して得たこと・学んだこと・苦労したこと・やりがい」「Ⅳ目標の達成度/今後にどのように活かしたいか」を記入することで、単なる感想で終わるのではなく、次の活動の見通しにつなげることを促している。小学校の学習支援ボランティアには年間のべ約100人が参加している。構成的グループエンカウンターでは、グループごとに、提示された言葉について考えを伝え合った。「相手を知っているつもりだったが理解が足りていなかった」「多様な考え方を知り視野が広がった」などの感想が挙がった。授業・探究・行事…実践からの学びをHRで振り返る※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.428)八戸東高校(青森・県立)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Case2272019 JUL. Vol.428
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