キャリアガイダンスVol.428
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「思った以上に多様なテーマが出てきて、自分の進路や将来につなげて書く子も多く、驚きました。生徒自身が自分の成長を振り返る良い機会になっただけでなく、仲間の意外な一面を知ることで、クラス内の関係性もより円滑になったように感じます。また、学びの総括プレゼンを学年混合で行ったことで、1年生なのにすごいなあ、2年生になるとああやって進路を考えるのか…などと、同学年だけでやるよりもお互いにとって刺激の多い場となったと思います」 取手第二高校では「Toride Ⅱの流儀」以外にも、生徒が自分自身の学びや成長を振り返る機会を意識的に設けてきた。その軸となるのが、特活だ。LHRでは、定期テストや学校行事などのイベントの後には、必ず振り返りを行っている。 「定期テストや模擬試験の振り返りでは、順位や得点だけで成果を判断するのではなく、前回と比べてどこが伸びたか、なぜできなかったか、自分はどこが弱いか、今後どうすればいいかなどを検証し、スタディサプリのポートフォリオに記入させています。また、学校行事の後には、何が大変でそれをどう乗り越えたか、そこから何を学んだかといったことを振り返り、同様に記入させています。試験も行事もやりっぱなしに 各グループの代表がクラス全体の前で発表をし、2〜4名のクラス代表を選出。最後は、特活の時間を使った1・2年生混合の「学びの総括プレゼン」で、27名のクラス代表がプレゼンテーションを行う。プレゼンは9教室に分かれて行われ、生徒は自分が興味のあるプレゼンを聞きにいける。各プレゼン後には、聴講した生徒が付箋(イイネカード)に感想や意見を書き、ポスターに貼り付ける。実施後のアンケート(図2)からも、生徒の心の〝揺れ〞が伝わってくる。 「発表した生徒にとっては、人前で発表したことや、自分では大したことないと思っていた取り組みが評価されたことで、自己肯定感の向上につながったようです。また、プレゼンを聞いた生徒にとっても、気づきや学びの多い、心が〝揺れる〞場になったことは、とても良かったと思います」 「Toride Ⅱの流儀」の一連の取り組みを振り返り、小澤先生は「予想以上の成果だった」と話す。しないのはもちろん、言語化して記録として残すことを強く意識しています。3年間の学びを目に見えるかたちで蓄積しておくことで、学びや成長を自己認識でき、大学入試や就職にもつなげていけるのです」 また、以前より、3年次には特活の一環として「進路報告会」を実施している。卒業を目前に控えた生徒が、1・2年生の前で高校3年間の学びを振り返りながら、自分が進む道について発表するという場だ。 「大学・短大や専門学校に進学する生徒もいれば就職する生徒もいるという多様な進路状況のなかで、本校の生徒は自分自身で道を決めていかなければなりません。1・2年次の『Toride Ⅱ』を進路選択の途中経過と位置づけ、最終的に3年次の『進路報告会』につながる流れを作りたいと考えています」 振り返りによる自己認識を重視してきた取手第二高校。「特活は生徒の将来に向けた土台づくりの場」と小澤先生が言うように、同校では進路選択や自己決定に向けたステップとして、特活が重要な役割を果たしている。プレゼンを聞いた生徒は付箋に感想を書いて貼り付ける。実践を通して生徒の積極性を引き出すことが目的のため、順位づけは行わない。●気づかいの流儀―修学旅行を通して学んだことゴンザレス・リーナさん(3年)「行動力をつけたい」と発表したところ、「(生徒会をやっていて)すでに行動力あるよ」というコメントをもらい、自分の意外な面に気づかされました。●私の流儀―家庭学習について神林正代さん(2年)看護科のある大学への進学を目指して力を入れている家庭学習について発表しました。「将来に向けて勉強していてえらい」というコメントに励まされました。●全力の流儀―検定合格に向けて全力で取り組んだこと小川 蘭さん(2年)プレゼンには全然自信がなかったのですが、「笑顔がいい、聞きやすい」というコメントをもらい、自信がつきました。人前で話すのは良い経験になりました。●私の流儀―人とのつながり方について小日向 月斗さん(2年)習い事の空手を通して学んだ礼儀作法について発表しました。先輩から「後輩なのに将来について考えていてすごい」とコメントをもらい、自信になりました。● 私の流儀―文化祭を通して西田英奈さん(3年)「Toride Ⅱの流儀」は将来どうなりたいかを見つめ直すきっかけになり、後回しになっていたやるべきことをきちんとやろうという気持ちになりました。●自己改革の流儀―日常生活で自分の意思を持って生活する櫻田遥香さん(3年)「自分に足りないものに気付けたことがすごい」というコメントがうれしかったです。「Toride Ⅱの流儀」を通して、進路を具体的に考えるようになりました。学びの総括プレゼン大会「Toride Ⅱの流儀」アンケート図2プレゼン(ポスター作成)を通して、今後の活動に対する気づきはありましたか?まったく参考にならなかった2%まったく当てはまらない3%とても参考(刺激)になった47%参考になった47%当てはまる64%とても当てはまる25%他者のプレゼンの活動内容で 参考になるものはありましたか?振り返りによる自己認識を重視する生徒の声写真前列右から、ゴンザレスさん、神林さん、小川さん。後列右から、小日向さん、西田さん、櫻田さん。参考にならなかった3%当てはまらない7%「学びの総括プレゼン」で発表した皆さん取手第二高校(茨木・県立)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Case3292019 JUL. Vol.428

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