キャリアガイダンスVol.428
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まざまな工夫をこらしている。 「添削されているような気持ちにならないよう、青ペンを使っています」(長田 京先生) 「どんな内容が書かれていても、批判的にならず、共感的に返すよう気をつけています」(三谷大樹先生) 「生徒が書いた内容に対してだけでなく、目に留まった日頃の様子についても『〇〇をがんばっていたね』などと触れ、自覚のなかった良い面に気付くよう促しています」(中越陽一先生) こうした担任からのメッセージがもらえることを励みにして、振り返りをしっかり書こうとする生徒も多いという。 また、キャリア・パスポートを通じたコミュニケーションが、効果的な生徒のキャリア発達の支援となるよう、10月に追手門学院大学心理学部・三川俊樹教授を講師に招いて校内研修を実施。学校全体でカウンセリングの視点に立った対話を目指している。 1年間、生徒はキャリア・パスポートに前向きに取り組んだ。少しずつ記入量の増加が見られ、当初は空欄ばかりだった生徒も、1年間の振り返りでは担任への感謝の言葉を書いていた。 キャリア・パスポートに蓄積された情報は、次の学年へと引き継がれる。今年度3学年の担任となった中越先生も重宝しているという。 「初めて関わる生徒もいますが、これまでの経験からどんなことを考え、これからどうしていきたいか、希望進路にもつながる情報を得たうえで話ができるのは助かります。春の面談でも活用しました」 今年度は、年6回程度のLHRも活用したキャリア・パスポート年間計画を作成し、一層の充実と定着を図っているところだ。 「キャリア・パスポートは特効薬ではありません。それまで気付かなかった自身の変化に気付き、成長を感じる。それを毎年積み重ねていくことにこそ意義がある」と小島先生。キャリア教育の要としてのHR活動への期待感も高まる。 「これまでもベテランの教員をはじめ、HR活動を効果的に実践してきた例は多いと思います。さらに、キャリア・パスポートという〝仕掛け〞を使うことで、経験年数によらない、学校全体の教育力の底上げにつながるのではないでしょうか」(谷脇校長)り返りでは、個人で記入するだけでなく、1年間がんばったことや来年度に向けた抱負などをクラスメイトと語り合い、他者から助言や励ましをもらうという内容で実施した(写真)。 作成したシートは、量・内容とも負担感がないよう配慮したというが、それでも書けない生徒はいる。「本音を出したくない生徒もいるのではないか」と菊池範之先生。書かせることを目的とせず、その態度・姿勢からうかがえる生徒の状況をしっかり見取り、面談や日常会話に活かしているという。 生徒が記入したキャリア・パスポートは、担任が回収して確認し、メッセージを添えて返す。担任はこのひと言にさ校内研修も行い効果的な対話を各担任で工夫学年間で情報を引き継ぎ進路指導にも有効活用年間振り返りの様子。当初、話し合いができるのか懸念する声もあったが、どのクラスも笑顔で取り組んでいた。宿毛高校が作成したキャリア・パスポートより図1「生徒が自己評価できる」「生徒が書きやすい量・内容」「がんばったことが書ける」「進路に役立つ(志望理由書や面接で使える)」「進路を考える機会になる」に留意して作成。プラスティック製の個人ファイルに入れ、普段は職員室で保管。学校行事後に時間を取って記入。各項目の文字数は80字が目安。行事の振り返りシート蓄積してきたキャリア・パスポートを参照しながら1年間を総括して自己評価を行い、来年、高校3年間、10年後の目標を設定する。年間振り返りシート各自の目標に対する自己評価、がんばったこと、次の目標や手立てを記入。学期振り返りシート年間振り返りシートには、担任に対し「良いことをたくさん書いてくれて嬉しかった」「いつもポジティブにしてくれた」など感謝の言葉が目立つ。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.428)宿毛高校・春野高校(高知・県立)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Case4312019 JUL. Vol.428
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