キャリアガイダンスVol.428
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振り返りを通じて支援する生徒の自己肯定感・自尊感情の向上 春野高校は、農業系の専門高校を前身とする総合学科高校だ。特別活動の特質を表すキーワードでもある「なすことによって学ぶ」を校是とし、実体験からの学びを重視してきた。 16年度に下司眞由美校長が着任したころの同校は、遅刻や欠席が目立ち、退学者の多さも課題だった。その背景に見られたのは、生徒の自己肯定感・自尊感情の低さだという。 「生徒からは『どうせ春野だから』というマイナスイメージの言葉も聞かれました。勉強の苦手意識が強く、自信のない生徒も多く入学してきますが、本校での学びで自信や誇りをもてるようになってほしいと強く思いました」(下司校長) 現状の打開に向け、まず全教職員で改めて校是の意味を確認し、目指す生徒の姿として「自立&自律」を掲げて目標を共有。具体策の一つとして、生徒一人ひとりに「キャリアノート」と名づけた手帳を配付し、自己管理と日々の振り返りの習慣化を図った。生徒はSHRに手帳を開いて1日を振り返り、「今日は〇〇が進んで良かった」「明日は〇〇をがんばりたい」などと記入している。 この2年間の実践の上に、学びや活動の振り返りをさらに充実させようと、18年度、県の研究指定を機に1・2学年から「キャリア・パスポート」を導入。学年団がチームとなり、学年主任中心にクラス担任の意見も取り入れながら取り組んできた。 手帳での日々の振り返りに加え、新たなシートを作成し、HRの時間を使って始めたのが、学期ごとの目標設定とその振り返り、および年度末の年間振り返りだ(図2)。その際の材料となるのが、手帳の他、産業社会と人間、総合的な学習・探究の時間、各系列の実習などにおける学びの記録、自主的に参加したボランティアやオープンキャンパスなどの活動後に記入している「校外活動振り返りシート」など。これらを参照して自分の成長を自覚し、次の一歩につなげていく。 書くことが苦手な生徒も多いが、「各担任は、書く目的を明確に示したり、気持ちを言葉に表すことが苦手な生徒には『こんなこともあったよね』と対話しながら気持ちを言葉にする支援を行ったり、それぞれ工夫している」(村亜希先生)という。 また、手帳は担任が定期回収してコ春野高校が作成したキャリア・パスポートより図2記入後は個人ファイルに入れて職員室で保管。18年度は下記以外に学期振り返りシートも独自に作成したが、今年度は学期始めに立てた目標を常に手元で確認できるよう手帳のページを利用する方法に変更した。書式は教室にストックしてあり、活動を行った生徒が随時記入して提出。校外活動振り返りシート1年間を振り返り5つの資質・能力を自己評価し、どう成長したかを具体的に記入。1枚に3年分記入でき、高校入学時からの成長がわかりやすい。年間振り返りシート教員間での目標共有を土台に「キャリア・パスポート」を導入毎日の記録と学びの履歴を節目に振り返り、次につなげる写真右上から、校長 下げし司眞由美先生、総合学科推進部長 和田るみ先生、1学年主任 山岡ゆう子先生、2学年主任 古畑邦明先生、3学年主任 村亜希先生年間振り返りシートに担任がメッセージを記入。生徒はそれを読んで、改めてがんばっていこうと思ったり、目標意識を高めたりした気持ちを記録しておく。春野高校1908年開校/総合学科 生徒数377人(男子189人・女子188人)進路状況(2019年3月卒業生)大学13人・短大15人・専修学校/各種学校67人・就職40人・その他5人学校データ322019 JUL. Vol.428
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