キャリアガイダンスVol.428
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メントを入れており、キャリア・パスポートについても同様に対応している。コメントを入れる負担の大きさが問題になることもあったが、手帳の回収頻度を見直すなど対策してきた。しかしながら、担任コメントに励まされる生徒はも要因の一つ」と下司校長は考えている。「キャリア・パスポート」の導入に当たって、教員は幾度となく「何のための取り組みか」に立ち返って議論しながら試行錯誤してきた。「学校の教育目標や目指す生徒像に向けた活動であることを常に意識しながらみんなで取り組んだ」と和田るみ先生。そのことが、学校全体で同じ方向を向き、〝チーム春野〞としての連携強化につながっている。 今年度、LHR年間計画にキャリア・パスポートを活用する時間を組み込んで体制を整備し、3学年では就職や進学の志望理由にも活かしていく予定だ。 「あくまで生徒を成長させるためのツールとして、手段が目的化しないよう定期的に検証しながら改善を重ねていきます」(村先生)多く、気付きや変容を促す効果もあがっていることから、意義を感じながら取り組む教員は多いという。 「服装の乱れをよく注意され、褒められることの少なかったある生徒が、昨年度、テストで優秀な成績をあげたことがありました。それを境に、彼女はさまざまな検定に挑戦するように。担任が手帳やキャリア・パスポートを通じて生徒のがんばりを認めたことも、意欲を高める一助になったと思われます」(古畑邦明先生) 今、学校行事は以前より盛り上がるようになり、検定や校外コンテストなどでの生徒の活躍も目立つ。今春の卒業生からは「なんか学校が変わった気がする」という声が挙がった。同校では定期的にいくつかの生徒アンケートを実施しているが、昨年度は複数のアンケートに自己肯定感の向上など良い傾向が表れた(図3)。これらは同校が行っているさまざまな取組の総合的な結果だが、調査担当の山岡ゆう子先生は「各担任が生徒にしっかり向き合い対話を図ってきたことも大きい」という。 また、キャリア・パスポートには教員が個々の生徒の実態を把握できるという側面もある。例年全国平均を上回る退学者数が昨年度は1人と激減したことは、「教員が生徒のちょっとした心の変化に気付けるようになったこと教員の生徒把握の強化が退学者激減の一因にアンケート結果にみる生徒の変化図3自分には良いところがあると思う67715820406080100(%)085917479808750自分のことが好き困難にぶつかっても、自分なりに解決しようと思う将来の目標や夢をもっている周りの人から自分が大切にされていると思う2017年度2018年度年間振り返りでは、個人作業だけでなく、各自の振り返り内容を共有するグループワークも実施。自己評価が低い生徒に対して、クラスメイトが「俺も同じだよ」「君ならできる」と励ましたり、「こんなこともできていた」と本人に気づきを与えたりする姿も。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.428) 紹介した2校は、なぜ「キャリア・パスポート」の導入を順調に進めてこられたのか。まず共通しているのは、学校の課題への対策や教育目標の実現のための「ツール」として取り組んだことだろう。さらに各校の特長も見られる。 まず、宿毛高校では、総合学科推進部長が教員の負担に配慮して全体設計し、教員全体で共に学び、実践しながら活用のかたちをつくってきた。 「トップダウンというより、現場の裁量を大きくして各担任の工夫を引き出す取組。それによって緩やかにレベルアップしてきた」(浦田教頭) 一方の春野高校では、学校目標を繰り返し共有し浸透を図った管理職のリーダーシップと、学年団のチームワークが実践を支えてきたと言える。 「学年の実態に合わせ、担任の意見を聞いて微調整しながらできたのが良かった」(村先生) また、生徒の変容データを現場にきちんとフィードバックすることで、負担ではなく意義を感じられるようにし、取組の形骸化を防いでいくという。 両校とも、取組2年目となる今年度は、蓄積されるシートをどう整理して何を残すのかも検討し、それぞれのキャリア・パスポートを活用したHR活動の充実を図っていく意気込みだ。 「教科の授業と同じように、キャリア・パスポートを活用したHR活動が、特別なことでなく行われる。そういう状態を目指していきたいですね」(宿毛・小島先生)肯定的な回答の合計宿毛高校・春野高校(高知・県立)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Case4332019 JUL. Vol.428
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