キャリアガイダンスVol.428
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「キャリア・パスポート」に期待。なぜなら、「キャリア」というものを直接、扱うことができるから別活動こそキャリア教育の要。これが明記されたことは大変意義があることだと思うのです。 長くキャリア教育に携わってきた立場からすれば、今回の改訂の最大のポイントは、ホームルーム活動の内容⑶として「一人一人のキャリア形成と自己実現」が設けられたことです(図1)。「キャリア教育の要」と示された箇所であり、教育活動全体の取組を、自己の将来につなげる役割を果たす大切な部分です。 今回、内容⑶が小学校にも設けられたことで、キャリア教育における小・中・高のつながりが明確になりました。考えてみれば当然のこと。小学校と中学校の間で、一人の人間が分断されるわけがないし、それは大学やその先の人生においても同様です。なのに、高校での勉強が大学での学びにつなが立できていないわけではないように、むしろ、然るべき時に、必要な援助をしっかり求められる力が自立には欠かせないと思います。 特別活動が要として位置付けられたことで、重要な役割を果たすものと期待しているのが、学びのプロセスを記述し、振り返り、さらには未来につなげることができる「キャリア・パスポート」(22ページ参照)です。これにより、定義こそ何度かされてきたものの、とらえどころのない「キャリア」というものを、いわば直接扱うことができるようになるからです。 多くの職業が消え、働くことの概らないという話もよく耳にします。キャリアとは本来、連続とか接続というニュアンスが含まれている言葉。日本語に訳しにくいのは、そのせいでもあるのです。 その内容⑶のなかで、一つだけ補足しておきたいことがあります。アの「学校生活と社会的・職業的自立の意義の理解」についてです。「社会的・職業的自立」という文言は、前述した2011年の答申を受けてのものですが、「自立」をどう捉えるかは、資質・能力論とも相まって、整理しておく必要があるでしょう。 資質・能力というと、その人単体の力と考えがちですが、能力とはそういうものではありません。他者からの援助を含め、何かを使って「できる」のであれば、それは本人の資質・能力として「できる」ということです。でなければ、人に支えられた時点で自立ではないことになってしまいます。障がいをもつ人が社会的・職業的に自小・中・高だけではなく、その後のつながりも見越してとらえどころのないキャリアを直接扱う「キャリア・パスポート」362019 JUL. Vol.428
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