キャリアガイダンスVol.428
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教科の学びが、生徒一人一人とつながるよう、教師が働きかけていく。それができるのが要としての特別活動念が変わると言われるなか、「将来どうなるかわからない」と不安を抱える若者もいます。しかし、それは今に始まったことではありません。確かに、変化のスピードは激しいけれど、未来、まして自分の将来がどうなるかなど、わかるわけがないのは、いつの時代も同じです。そのなかで人は悩み、もがきながら、その人らしく生きてきたわけです。だから、まずすべきは「自分は何者なのか」ということに、しっかり向き合うこと。 そう考えたとき、「キャリア・パスポート」の果たす役割の大きさに気付くはずです。感動した思い出や悔しかった体験も含めて積み重ね、折に触れて振り返る。そうやって自己理解を深めれば、将来、不測の事態がおこり、窮地に立たされたとしても、乗り越えられると思うのです。 思うに、これまでも優れた進路指導やキャリア教育の実践者は、そういうことをしてきたはずです。「キャリア・パスポート」こそないけれど、面談や声かけ、話合い活動などを通して、生徒に自己理解を迫っていたのだと思います。 ただ、残念なことに、年齢構成上、素晴らしいホームルーム経営をしてきた先輩の技を直接見る機会が減ったという声も聞きます。だからこそ、こうした自己理解や生徒理解のためのツールは、若い先生方の助けにもなるのではないでしょうか。 高校の場合、教科の専門性故に横の連携がとりにくい実情はあるでしょう。しかし、お伝えしてきたように「つなぐ」ことはキャリア教育の基本です。「この単元とこの活動は関係がある」と形式的につなぐのではなく、一人一人の生徒においてつなぐ。「ああ、そういうことだったのか」と、生徒自身が、教科の学びと自己をつなげ、さらに将来につなげていく。 もちろん放っておいては生徒は気付きません。特別活動を中心に、すべての学びが、自身とつながるよう、教師の働きかけが絶対的に必要です。そうしたアプローチが最もしやすいのが担任であり、特別活動です。 子どもたちの学びが積み重なり、未来へとつながっていく。それこそキャリア教育が大切にしてきたことであり、私が願っていることです。菊池武剋 (東北大学名誉教授)学びをつなぎ、未来へつなぐ 「特別活動」Message372019 JUL. Vol.428
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