キャリアガイダンスVol.428
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412019 JUL. Vol.428先生:そうか、生活を安定させたい一方で、やりがいも感じたいと思っているんだね。それって大事だよね。生徒:はい。先生:じゃあ、まずは生活をしていくために、必要になる条件を整理して書き出してみよう(生理的欲求と安全の欲求)。それと、どういう人たちと、どんなふうに関わっていると嬉しいか(所属と愛の欲求)。また、自分がどういうことで周囲から認めてもらいたいと思うか(承認の欲求)。何をしているときが一番楽しかったり、没頭できたりするか(自己実現の欲求)。今までの経験を思い出しながら、考えてみたらどうかな。先生:うん、しっかりした生活基盤は大切だな。安心して働けることは大事だ。ただ、人は欲張りなんだな。生活が安定するようになると、「もっといい人たちと働きたい」(所属と愛の欲求)とか、「自分をちゃんと認めてほしい」(承認の欲求)とか、「もっとやりがいのあることをしたい」(自己実現の欲求)って思うようになるんだ。生徒:え~、そうなの?先生:部活でも、最初は慣れるのに必死なのが徐々に「もっと活躍したい」「自分を認めてほしい」って思わない?生徒:確かに~。先生:だから、仕事内容やどういう人が働いているかも、ちゃんと確認してみよう。先生:難関大学に入るだけの努力をしたということは、きっと自分の自信にもつながる経験になると思うよ。生徒:でしょ。先生:ただ、大学はゴールではなく、そこで何をするかも大事だよね。そのためには、自分が少しでも興味のある領域や、熱中できそうなものがあるかどうかを確認しておくことも、大切なことだと思うけどな。生徒:え~、でも、何がしたいかなんてよくわからない。先生:そういうときに自己分析することで、やりたいことのヒントが見つかると思うよ。今までに、これはすごく没頭して楽しんだぞという経験(自己実現の欲求)は何かあるかな?<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス何かに没頭できるそんな体験の後押しを『マズロー心理学入門―人間性心理学の源流を求めて』中野 明著 アルテ発行マズローの欲求階層論だけでなく、全生涯にわたっての研究内容などを、わかりやすく解説した書。マズロー心理学の概念把握に役立つ。 フロイトは精神的に病んでいる人の心理を扱いましたが、マズローは健康な人の心理に注目したという点で、画期的な存在です。だからこそ、キャリア教育やキャリアカウンセリングの基礎理論として役立つ概念だといえます。特にマズローは、「自己実現の欲求」をさらに2つに分けて考える自己超越に関する研究を行っていますが、そこで言われる「至高体験」とは、一般によく言われる「フロー体験」にもよく似たものではないかと思います。そのような体験は、損得なしにがんばったときに得られる自分の中での充実感ともいえる感覚ではないでしょうか。ここに到達できるのは、ごく限られた一部の人という言い方もされますが、少しでも近づくためには、まず何かに打ち込むことが大事だと言えるでしょう。その意味では、適性を慎重に考え「合っている、合っていない」という選択だけではなく、「とりあえず体験してみる、やってみる」といった「行動」を促すことも、進路指導では重要ではないでしょうか。
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