キャリアガイダンスVol.428
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まとめ/長島佳子 撮影/早坂卓也1978年創立。各学年24クラスを有する埼玉有数の大規模校。文武両道を唱え、進路別に3類型9コースを設置。甲子園で全国優勝歴のある野球部をはじめ、部活動にも力を入れている。2016年、日本の高校としては初の国際安全校(International Safe School)の認証を受ける。いしはら・まさのり1958年生まれ。浦和学院高校が創立4年目のときに、社会科教員として新卒で着任。以降、学校の拡大とともに生活指導部副部長、学年指導部長、進路指導部長、教頭、副校長を歴任し、2017年より現職。教員を目指したきっかけは、大学時代の教育実習で、生徒たちから必要とされて承認欲求を満たされた経験。大学時代から自身もパワーリフティング部に所属し、浦和学院にもパワーリフティング部を創設。生徒たちを世界大会にまで導く。全日本高等学校パワーリフティング連盟設立にも携わり理事長も務め、現在同連盟会長。部活のOBたちが自身の昇進などを祝ってくれたり、40-50代になった卒業生たちが今でも学校を訪れてくれることが何より嬉しいと語る。 本校には、「吾道一貫」の建学精神と、「克己 仁愛 共生」という校訓があります。それを現代で育成したい人材像に置き換えれば、社会貢献できる人間と言えると思います。 世の中で役に立つには、何らかの能力が必要で、その能力を養うために努力を続けなければなりません。継続して努力ができるのは、自分の好きなことや個性を活かせることです。自分ならではの個性で世の中から必要とされたとき、承認欲求が満たされ、個人としての幸せも得られると考えています。 生徒数が多い本校は、多様性が担保されています。その中で一人ひとりの個性が発揮できるよう、生徒を計る尺度をたくさんつくっています。学業では進路別に3類型9コースを設置、部活動は40以上あり、生徒が創部を申し出てつくった部も多数あります。 生徒たちが自分の個性に気付ける環境づくりとして、一つには、国際交流などの非日常体験の機会を多く設けています。 また、生徒の話を聞く場面も増やしています。私が進路指導部長を務めていた約15年前、生徒が明確な目標もなく進路を決め、大学進学率が6割を切っていたことが課題でした。漠然とした考えは誰かと話すことでまとまっていくものです。夢は言葉にしたときに目標に変わります。生徒が話すために必要なのが「聴く耳」です。そこで、進路指導室を生徒が入りやすい環境に変え、秘匿すべき内容以外は閲覧に来ている生徒たちの側で相談にのっていました。すると「先生に相談していいんだ!」と、列をなして進路指導室に来るようになりました。 同様にクラスでも話す機会を増やすために、個別面談を各学年で年5回を必須としました。学年の最初は話すことがなくても、場があることで生徒たちはだんだん話すようになっていきます。面談履歴は成績などとともにすべてデータベースに残し、教員や生徒が必要な情報を必要なときに個別情報一覧表として取り出せるようになっています。 こうした取組により、大学進学率が8割に上がっていきました。 個性によって貢献できる人材になることは教員にも同様に求められます。本校では校務分掌を細分化し、約70個の係を係長に任せています。役割を与えると、それまで指示待ちだった若い先生たちが、率先して自分の意見を述べるようになっただけでなく、ベテランでは気付かない多様な新しい考え方がボトムアップで出てくるようになりました。容認が難しい内容でも、全否定せずに聴く耳をもつ態度が管理職に求められていると思います。 生徒も教員も、活躍できる場所があれば、教えなくても自ら努力して成長していきます。こうした環境で育った生徒たちが、社会のさまざまな場面で活躍していることが教員としての喜びです。生徒が自身の個性に気付くよう話しやすい場面を多様に設置教員も個性を発揮できるよう校務を細分化し責任をもたせる石原正規浦和学院高校 校長浦和学院高校(埼玉・私立)生徒も教員も、個性を活かせる「場所」を見つけることで自ら成長していく432019 JUL. Vol.428

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