キャリアガイダンスVol.428
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17年3月に実施した教員研修では、「どんな生徒を育てたいか」をテーマにグループで言語化した。問う問題に加え、全体の2割程度を目安に思考力・判断力・表現力を問う問題を取り入れるようにした。 また、ペーパーテストでは測れない主体性・多様性・協働性を4段階で評価しようと、全学年全教科統一のルーブリックを作成(図3)。学期に2回、これを用いた評価を行い、成績にも反映させている。18年度からは、生徒自身も、同様の基準で学期末に自己評価を行っている。 「本校が目指す学びの姿を生徒と共有し、生徒自身に、現在の自分と目標地点を把握させてメタ認知力を向上させることを目的としています」(森内教頭) この3年間の授業改革は、教員にとって簡単なことではない。AL導入が打ち出された当初、数学科の斎藤 奈織子先生は「本当にできるのだろうか」と不安が大きかったという。そのような状態から出発し、最初に変わったのは生徒だった。AL導入から数カ月で、教員から「生徒がぼーっとすることが格段に減った」「置いていかれる生徒が少なくなった」「生徒たちの『気づき』が増えている」といった声が出るようになっていた。 「最初に変化したのは、学習に前向きでなかった生徒たち。一つの正解を追う授業ではないので、臆することなく発言し、学ぶことを楽しむ姿が目立つようになりました。そんな生徒の様子を見て、教員もこの方向性で良いのだと勇気づけられたのではないでしょうか」(森内教頭) 各教員はさまざまな課題にぶつかりながらも、「時間内に収めることが難しいが、一度失敗するといろいろ考えられる」「生徒の多様性を引き出すチャンス」などと前向きに捉え、前進してきた。そのなかで、教員の在り方にも変化がみられる。 「生徒が描く将来像はそれぞれで違い、教員が決めつけるものではありません。各自の将来像に自ら近づいていけるよう支援するのが私たちの仕事。その視点に立って、指導するというより、生徒の成長をどう支援するかを大事にする教員が増えたと感じています」(森内教頭) 着実に進んできた改革の背景には、同校教員のチームとしての動きも垣間見える。以前の同校にはあまりなかったことだが、教育改革スタート以降は教員研修や互見授業が活発に行われている。AL導入準備期間には3カ月間で4回の研修により全員が同じスタートラインに立てるようにし、その後も実践と並行して年5回以上の研修を実施。授業改革の必要性についてのグループ討議や、教科を越えた授業見学と感想の共有による学び合いなどのほか、「どんな生徒を育てたいか」について教員一人ひとりが考える研修も行った(右下写真)。 また、教員個人でなく教科内で連携して改革に当たろうと、16年度以降、教科部会を頻繁に開催。さらに、教科主任には進路指導部のメンバーが就く体制にし、改革の狙いと内容が教科部会を通じて学校全体に浸透するようにした。学期ごとに教科部会で授業実践を振り返り、1年間の改革の総括として年度末に実施している公開研究会にも教科部会で連携して準備に当たるなどし、チームによる取組が改革を加速させている。「以前に比べ、他の先生に相談しやすくなった」という斎藤先生の話からも、教員組織の変容がうかがえる。 授業以外の面でもさまざまな改革が進行している。 「総合」については、新たに設置した探究部の主導により、1学年は共通テーマでグループ探究を行い、その経験を基に2・3学年で個人テーマを設定して探究活動に取り組むというプログラムを構築した。生徒が設定する個人テーマは、「江戸時代はなぜ約260年も続いたか」「なくそう空き家(守ろう自分の地域)」「火星への移住は可能か」など多様で、進路との関連性も学校生活のあらゆる場面に育成する力の視点を導入教員の在り方を変えた生徒の変容とチーム体制■教員研修「私たちはどんな生徒を育てたいのか?」国語総合あらゆる分野において『グローバル化』が達成された世界は到来するか?するとしたらその時世界はどうなっているか? しないとするとその理由は?数学どのような図形の面積に1/6公式を用いることができるか世界史A第二次世界大戦とはどのような戦争だったのか物理基礎静止摩擦係数が大きい場合と小さい場合では、どちらのほうがより正確に測定しやすいか英語表現英単語・日本語の由来・成り立ち・語源について、英語を用いて発表し、議論を深めよう18年度から課題探究型授業に取り組んでいる。例えば国語総合の「グローバル化とグローバリズム」の単元では、全10回のうちの後半に、グローバル化に関する問いについてグループで話し合い、クラス全体で考えを共有する授業を展開した。図3 主体性・多様性・協働性を測るルーブリック  図2 2018年度に授業で扱った課題の例 462019 JUL. Vol.428

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