キャリアガイダンスVol.428
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まとめ/長島佳子 撮影/桐原卓也なかがわ・きょうかず1957年生まれ。関西大学法学部卒。大学時代にアルバイトで塾の講師をしていたときに、わかりやすい説明を工夫したり、それに対する生徒の反応が楽しく教員を目指し、1981年、近畿大学附属中学校に着任。同校の教頭、同学附属高校・中学校の教頭を歴任した後、2014年から同学附属小学校校長・附属幼稚園園長に就任。2017年より現職。小学校校長時代より、毎朝校門に立って登校する生徒たち一人ひとりに声をかけて迎えている。教員1年目のときに、生徒がいたずらをして自身の車に傷を付けられた際、別の生徒たちが修理代をカンパしてくれた。次年度は公立校への転任も考えていたが、この出来事がきっかけとなり同校で教員を続けることを決意。その生徒たちの子どもも同校に入学したり、保護者として役員になったりと、2代にわたって関係が続く卒業生も多い。 本校は、近畿大学と共に「実学教育」「人格の陶冶」を建学の精神としています。大学における実学とは、社会に出てすぐに役立つ専門性を磨くことですが、高校はその土台をつくる場です。変化の激しいグローバル社会に出ていく生徒たちに対し、「自立した学習者」を育成目標としています。 21世紀は、学び方を知らないことは、読み書きができないことと同等と言われています。そのため本校では、「進路保障」と共に「成長保障」を教育方針としています。大学入試をゴールとせず、入学後や社会人になった後も自ら学び続け、成長する力を身につけようということです。 私がこう考えるきっかけとなったのは、現職に就く前の3年間、本学の附属小学校・幼稚園の長を務めた経験です。それ以前は中高校生の指導をしていたため、大学入試が喫緊の課題でした。しかし、大学入学が10数年先である幼稚園児たちを前にしたとき、彼らが身につけるべきは、これからの人生をより良く生きていくための土台となる、主体的に学ぶ力だと教育観が変わりました。そしてそれは高校生も同じだと気付いたのです。 生徒が主体性をもつためには自己肯定感の醸成が不可欠です。学校は生徒に知識を与えるだけでなく、すべての場面で生徒が自己肯定感を得るトレーニングをする場であるべきだと考えています。多様な経験を積める場を数多く与え、失敗してもいいからチャレンジすることを推奨しています。 例えば、さまざまな海外研修プログラムを用意したり、プレゼン大会を行ったり、学業以外でもオープンスクールの企画を生徒に任せています。また、ICT環境の充実やアクティブラーニング型授業の深化など、知識を活用する土壌づくりも進めています。 現在の教育改革の遂行には、教員の意識改革が必須です。学校は「教員が教える」のではなく、「生徒が学ぶ」場であると、教員がマインドセットを変えていかねばなりません。生徒に主体性や協働性を発揮することを求めているのですから、まず教員自身が主体的で協働的な姿を体現して生徒に示すべきです。そのために「チーム近大附属」として、学年やコース、群編成など、さまざまなチームを設けて、若い先生たちにも裁量と責任を与えています。 本校は200人を超える教員がいる多様な集団です。その個性がかけ算となって新しい価値を生み出しています。校長の役割は、適材適所に人員を配置し、委ねて任せ、決断することです。新しいものを生み出すときには、何かを捨てることも必要です。校長としてその取捨選択の勇気をもち、これからも目の前の生徒たちの成長につながる学校改革を進めていきたいと考えています。主体性・自己肯定感を醸成するために、多様な経験の機会を提供現場の先生に委ね、任せ、取捨選択を決断する勇気をもちたい一人ひとりがより良く生きるため、一人ひとりがより良く生きるため、社会に出てからも学び続ける社会に出てからも学び続ける「成長保障」ができる教育を「成長保障」ができる教育を中川京一近畿大学附属高校・中学校 校長1939年創立。早くからICT教育、グローバル教育に力を入れ、2013年度入学生から全生徒へタブレットを導入したり、多様な海外留学や研修プログラムを導入。近畿大学への進学のみならず、難関国公立大学の合格者が増え続けている。近畿大学附属高校・中学校(大阪・私立)492019 JUL. Vol.428
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