キャリアガイダンスVol.428
59/66
思い描いている授業の在り方目指す生徒像他の教育活動や社会とのつながり● 自分の好きなことや、やりたいことを発見し、それを表明することもできる● 社会の課題を自分ごとで捉え、この世界をどうしたいか自ら考え、行動しようとしている● 望むことのためにどう行動すべきか深く考えることができ、そのために必要な知識も身に付いている・ 校外のSDGsのイベントやスタディツアーなど、授業でふれた社会課題を掘り下げられる機会を積極的に紹介・ 生物学や経済学など学問に興味をもった生徒は、大学とつながれるよう支援・ 学習内容の順番は、季節の特色を踏まえる(芽吹く春に植物観察、感染症が広まりやすい冬に体内環境など)生物の授業・ 学習内容に関連するさまざまな解のあるテーマについて、生徒同士で話し合い、考えを深める・ テストでは、ある社会課題とどう向き合うか、学習内容を踏まえ自分の考えを書くことも求める・ 社会の在り方や生き方について深く考えるための知識(生態系、細胞や遺伝子、体内環境など)・ “I want”を言える力・ 問いを立て、仮説・検証して探究する力知識や能力を「活用」する場面知識の「習得」や能力の「育成」■ INTERVIEW思いを素直に出せていた小学生の頃の感覚が戻ってきたようでした」(中村さん) 「佐野先生の授業は何でも言っていいので話し合いが萎縮することがない。だから生物基礎の授業で、大量消費の裏で苦しむ人に迫った映画を見て話し合ったときも盛り上がったんですよ」(金居さん)「そこから僕らは消費のことに興味をもち、文化祭で使うベニヤ板も激安の輸入材だと気づいてからは、特に木材の消費を追うようになりました」(倪にいさん) 「でも問題を追うほど、あちらを立てればこちらが立たずの現実も見えてきて、何が正しいかわからなくなって。よく考えていかないと、と思いました」(白土さん) 「インターネットや文献にあたるだけでなく、人に会ってこそ得られる情報があるということも実感しました」(品川さん) そうして生徒主体の活動を重ねると、 「生物基礎」で佐野先生と一緒に授業を創った生徒たちは、2、3年生になるとさらに主体的な活動を深めていく。現3年生には、左のコラムのような自主活動を行う生徒たちもいるほど。本人たちは3年間の変化をこんなふうに語る。 「佐野先生の授業、最初はついていけないと思いました。でも段々、覚えるだけでなく、自分が理解したことや考えたことを外に出すことも求められているんだな、とわかってきたんです」(山口さん) 「先生から教わるというより、生徒同士で課題について話し合い、助け合う授業。希望の進路も自然に定まってくるようだ。 木材の消費の問題を追ってきた4人のうち、倪さんと白土さんは、経済学部や経営学部への進学を考えている。消費の在り方を変えるには、企業活動やお金の動きも学ぶ必要性があると感じたからだ。金居さんは農学分野で国産材の流通コスト削減を考えたいという。品川さんは環境学の先進国オランダで、人の活動が環境に及ぼす影響をより掘り下げたいそうだ。 山口さんは社会学や経営学に興味がある。好きな音楽について「業界を守り立てる術を自分も考えてみたい」と思うようになったからだ。中村さんは教育学を勉強したいという。理由は次のとおりだ。 「平和に向かう教育とはどういうものか考えたいので。ちょっと痛い人と見られそうですが、私は、みんなで平和な世界を創れたらいいな、と思っているんです」生徒はこう変わる主体性を伸び伸び発揮し各自が学びを深めるように中村さん「うちの学校の防災訓練はみんなに緊張感がなく、いざというときに大丈夫か心配だったんですね。だから、授業以外でも自分から提案をするChalk-Jackをすればいいと思って、有志のメンバーで防災訓練を見直す活動を始めました」山口さん「中村さんがまず全校生徒にアンケートを取って、防災訓練の意識調査をしたんですよ。実は私も危ないと思っていたので、問題をこのままスルーしちゃダメかもな、と思って、仲間に加わりました。今は7人で活動しています」中村さん「なぜ防災訓練するのかから話し合い、『自分たちの将来の夢を守るため』だと思ったので、ポスターや動画でその思いを発信していくことを今は計画中です」授業も防災訓練も私たちがChalk-Jack!中村 生さん(左)山口那奈さん(右)金居さん「僕らの活動の目標は2つあります。商品を買うときに裏側の世界まで想像する『考える消費』を増やすことと、国産材の魅力を広めることです」品川さん「そのためにまず、金沢市にある企業と一緒に『国産材の定期入れ』の作成・販売を始め、木材が定期入れになるまでの裏側がわかるパンフレットも自作しました」倪さん「次に、児童館で子ども向けのお箸づくりワークショップを行い、子どもやその親に、日本の森やモノを労わることを考えてもらおうとしました。定期入れが1個売れると1人の子どもが無料で参加できる仕組みにもしました」白土さん「今は、僕らの卒業後もこの活動が続くようにしようとしています。約20人の後輩が集まってくれたので、お世話になっている人のもとに連れていってつないでいるところです」僕らが目指すのは『考える消費』を広めること左から倪 政一さん、品川陸人さん、金居新大さん、白土亜明さん592019 JUL. Vol.428
元のページ
../index.html#59