キャリアガイダンスVol.429
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ディンタースミス氏の講演は、約3分間の動画上映から始まった。氏の制作した『The Future of Work: Will Our Children Be Prepared?』(YouTubeで視聴可)では、工場、工事現場で、農業の現場で、機械による無人化が進んでいる様子が映し出される。自動運転車や無人店舗、医療ロボット、AIの活躍が紹介され、最後に「Will our Children be ready(子どもたちは準備ができているだろうか)?」と問いかけられる。 私は自分のキャリアの大部分を技術革新の分野に費やしてきました。この動画が表している世界が、私たちが向かっている方向であり、私が教育の仕事に情熱を傾けている理由です。AIは、世界で最も優れた腫瘍専門医、皮膚科医、放射線科医よりも優れており、新聞、ジャーナリズム、法律の文章も書き始めています。 映画『Most Likely to Succeed』(16ページ参照)を制作しようと思ったのは、定型的な仕事がなくなっているのに、学校が定型化された仕事に向けた教育をしているということの危機感を伝えたかったからです。 私の人生が大きく変わった理由についてお話しします。私には21歳と19歳の子どもがいます。そして、彼らが学校に通っている間に、私の考えは進化しました。当初、私は彼らが学校でやっていることには、意味があると思っていました。世の中の保護者と同じで、子どもたちの成績や、どれだけの宿題をやっているかを気にし、宿題が多い方が良いと考えていました。 しかし、時間が経つにつれ、子どもたちが3つの基本的な訓練しか受けていないことに気づき、心配をし始めました。3点とは「暗記すること」「簡単な処理を繰り返すこと」そして「指示に従うこと」。問題なのは、まさにこの3点が、機械知能の得意分野だということです。 ということは、12年から16年をかけて、子どもたちをロボット化しているわけです。機械より高くつき不完全なロボットになってしまう子どもたちの将来はどうなるのでしょうか?社会の中で行き場がなくなり、漂流状態つまり、仕事を転々とするような状態になるのです。何をやりたいのか、何に興味や情熱があるのかわからず、創造性や発明思考をなくしてしまうのです。 4歳の子どもをイメージしてみてください。彼らは数多くの質問をしますし、既成概念にとらわれない考え方ができます。すごいスピードで学び教育改革は日本だけではない学校は12年間かけて不完全なロボットを育てているまとめ/江森真矢子 協力/一般社団法人FutureEdu代表理事 竹村詠美氏アメリカの教育改革の現場から見えてきた学校の進化の可能性映画『Most Likely to Succeed』をプロデュースしたテッド・ディンタースミス氏。日本と同様に旧来型の教育が大部分を占めるという米国で、教育改革の現場を訪ね歩いた氏の講演抄録から学校改革のヒントを探ります。スタンフォード大学で工学博士号取得の後、半導体製造事業の経営、Twitter、Dropboxをはじめとする企業の創業期を支援したベンチャーキャピタルなど技術革新の分野でキャリアを積む。2012年にはオバマ大統領から国連総会のアメリカ代表に指名され教育分野の議論に参加。2012年より3年間をかけて映画『Most Likely to Succeed』を制作。映画公開後の2015年から1年間、全米各州の教育現場を訪ねて得た知見を基に2018年『What School Could Be』を出版(未邦訳)。技術革新の進む21世紀の教育の在り方について提言を続けている。https://teddintersmith.com/テッド・ディンタースミスWhat School Could Be アン/カンファレンス(一般社団法人 FutureEdu主催)より 撮影/杭原 加菜子152019 OCT. Vol.429

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