キャリアガイダンスVol.429
22/66

 神奈川県北端に位置し、全日制普通科・福祉科および定時制普通科をもつ県立津久井高校。生活面・学習面に課題があり、モラル・マナー・ルールの遵守や基礎学力の育成などに力を入れてきた学校だ。そんな同校に2017年度着任した熊坂和也校長は、「素直で無邪気な生徒たちと、生徒のために動ける先生たちがいるこの学校は、手立てをすればきっと良い方向に変わる」と確信したという。 熊坂校長は着任して間もない職員会議で、「生徒が活き活きと活動する学校」に向けた改革宣言を発表。その第一弾として、定期テストの廃止を提案した。テスト範囲が広いと勉強をあきらめてしまう生徒が多いことから、定期テストの代わりに、よりスモールステップを踏める単元テストなどを実施し、こつこつと努力する力を伸ばすのがねらいだった。 生徒の学習意欲の醸成に行き詰まりを感じていた教員は多く、好意的な反応もある一方、反発もあった。そんな反対意見に、熊坂校長は徹底的に耳を傾けた。 「多様な意見が出るからこそ組織は活性化するもの。反対意見は大歓迎です。『あなたはどうしたい?』と話を聞き、その場で結論が出なくても、お互いに言いたいことを言い尽くすよう心掛けています」(熊坂校長) こうしてさまざまな意見交換が行われた結果、18年度から中間テストのみ廃止し、新たな運用を行っている。 改革の動きは現場からも起こるようになった。その一例が、授業について語り合う「シェアCAFE」の発足だ。授業中、生徒の居眠りやスマホいじりは日常茶飯事で、対応に悩む教員は多い。そこで、教員がストレスを溜め込まないよう、〝愚痴〞も含めてオープンにできる場をつくってはどうかと、18年度に研究開発グループでアイデアが生まれた。すぐに実行され、月1回の開催に定例化。毎回、若手中心に10〜20人の教員が集まり、リラックスした雰囲気で語り合っている。管理職は参加せずに、お茶菓子の差し入れのみ行っている。 「一番の目的は先生方のストレスへの対処。とかく若手は悩んでいるのは自分だけと思いがちですが、先輩教員も同じように悩みながら工夫していると知るだけでも、気が楽になるようです」(研究開発グループサブリーダー・瀬川洋平先生) 会議や研修とは一線を画し、統一的な決定や成果は目指さないが、毎回テーマを設定して話している。ある時は、教員研修で決定した「授業で守る5つのルール」について、実施してみてどうだったかを語り合った。また、ある学年が始めた授業のユニバーサルデザイン化をテーマにし、その工夫を他学年と共有●モラル・マナー・ルールを遵守できる生徒●基礎学力を身に付け活用できる生徒●コミュニケーション力・行動力を発揮できる生徒目指す生徒像主な教育実践の変革〇定期テストの見直し(単元テスト・小テストの活用)〇授業のユニバーサルデザイン化の推進〇「授業で守る5つのルール」(生徒編・教員編)の設定〇遅刻なし・制服着用を推進する(推進週間) 「元気アップキャンペーン」実施〇定時制で実施していた生徒の居場所づくり (ポルトカフェ)を全日制にも開設変革を支える環境整備・授業について語り合う場の設置(シェアCAFE)・校長室の扉を常に開放・生徒会執行部からの意見収集・コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)・地元やPTAとの連携強化1948年開校/普通科・福祉科/生徒数509人(男子307人・女子202人)/進路状況(2019年3月卒業)大学18人・短大11人・専門学校46人・就職80人・その他21人学校データ「やってみなはれ」と記した幟の下に、おそろいの校章入りポロシャツを着て集まった全日制・定時制の先生方。最前列中央が熊坂和也校長。津久井高校(神奈川・県立)反対意見も歓迎し 徹底的に意見交換現場からの提案でユニークな取組が続々「対話」と「協働」で新しい学校づくりに向かう高校【実践事例】津久井高校 この3年間の動き「やってみなはれ」の精神で生徒と共に挑む活気ある学校づくり222019 OCT. Vol.429

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る