キャリアガイダンスVol.429
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 静岡聖光学院中学校・高校は創立以来、キリスト教精神に基づいた人間力を高める教育活動に取り組んできた。これを基盤にさらに社会変化にも対応していこうと、2018年の創立50周年を節目と位置付け、自ら未来を切り拓く人材を育むための新しい学校づくりに、猛烈な勢いとスピードで取り組んでいる。 そのなかで星野明宏校長が重視するのは、教員一人ひとりの〝第3の軸〞だ。 「教員の評価軸は、教科指導と生徒指導の2軸で語られることがほとんど。人間的なユニークさや哲学的な考えの深さなど、この2軸で語れない多彩な面をもつ教員は多いのに、それを発揮する場が少ないと感じます。埋もれがちな強みを掘り起こし、認めて活かすことで、教員は一層活躍できるのではないでしょうか」 星野校長(当時副校長)は新しい学校づくりの責任者となった際、まず教員一人ひとりと面談を実施。第3の軸につながる得意なことや、実はやりたいと思っていることを引き出すことから始めた。そうして浮き彫りになった個人の強み・思いを、学校の進化のために取り組む必要がある課題とマッチングさせることで、活躍の場を創出。仕事に人を当てはめるのとは逆の発想で、各教員が得意分野に集中できる環境づくりを行っている。 「人はやりたいことをやるとき一番力を発揮できる。教員それぞれが最大限に力を発揮することで、学校を動かしていきたい。それを、働き方改革もにらみながら、総合的にコーディネートするのが私の役割だと考えています」(星野校長) 第3の軸を活かす機会を得た教員が、取組を大きく進化させる例は多い。現在、同校の重要課題となっている国際交流の推進においてもそうだ。この1年間でアジアを中心とする8校との交流が新たに始まり、さらに今年8・9月、同校にアジア7カ国の生徒が集まる第1回「国際未来共創サミット」を開催した。これらを推進した一人である田代正樹先生(副教頭兼教務部長)は、古典の教員だが「新しいことをやるのが好き」という軸ももつ。昨年夏、マレーシアの学校から招待された国際サミットに、生徒の引率で行ってみないかと星野校長に声をかけられ、飛びついたのが始まりだった。 「アジア各国の教育の先進性や質の高さを肌で感じ、日本の教育の遅れや学ぶ意識の低さに強い危機感をもちました。生徒も同様に大きな衝撃を受け、目の色が変わりました。この刺激を多くの生徒と教員に受けてほしい。その思いで門戸の拡大を図ってきました」(田代先生) そのなかで、自身が古典を教える意味をも再確認したという。 「古典の勉強は役に立つのか?との生徒の問いに、これまで腹落ちさせる答えができずモヤモヤしてきました。しかし、国際交流にあたり、古典の教員として日本の文化や歴史を語れることは、言語力以上に強みとして活かせるのだと、担当科目の重要性を再確認す1969年開校/普通科/生徒数238人※高校のみ/進路状況(2019年3月卒業)大学38人・専門学校1人・その他18人学校データお話を伺った教職員の皆さん。左から2人目が校長の星野明宏先生。創立50周年記念事業の一環で知的創造空間としてリニューアルされた図書室「聖光カルチャーラボ」にて。静岡聖光学院中学校・高校(静岡・私立)得意や「やりたい」を引き出し教員の〝第3の軸〞に静岡聖光学院中学校・高校 この3年間の動き●アドミッション・ポリシー 「好奇心」「粘り強さ」「独創性」を柱とした 求める生徒像●カリキュラム・ポリシー 自律した学習者・探究者を育てる●ディプロマ・ポリシー 地の塩・世の光*の担い手となる *聖書にある言葉主な教育実践の変革〇授業改革(PBL型授業の推進)〇ICT教育の推進〇国際交流の充実〇同校にて「国際未来共創サミット」の開催〇「静岡聖光学院PDCAプログラム」の開発、展開〇STEAM教育の導入変革を支える環境整備・教員一人ひとりの強みや思いに応じた活躍の場の創出・プロジェクトベースによる課題解決・事務職員の登用・他校との連携(21世紀型教育機構加盟)・企業との協働によるプログラム開発、教員研修実施・ビジョンに沿った校舎リノベーション教員一人ひとりの強みを引き出して活かし自ら進化を続ける文化と機運を醸成262019 OCT. Vol.429

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