キャリアガイダンスVol.429
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ることができました(田代先生) 学校の進化のために必要となる課題は、生徒の状況や社会の潮流、教育改革の動向などにより常に変化し、予測や準備が難しいケースも多い。そこで同校は、取組の必要性が高まれば、校務分掌や年度の枠組みにとらわれない〝プロジェクト〞ベースで対応している。課題の重要性が増したり、教員間に取り組む機運が高まったりすると、年度途中でも的確なメンバーを集めてプロジェクトを立ち上げ、目的を達成し次第解散する。これまで宗教部と生徒指導部の融合や文化部改革など、教員も全容を把握しきれないほどさまざまなプロジェクトが実施されてきた。 プロジェクトには外部の力も適宜取り入れる。その好事例が、今年度から中学生対象に実施している「PDCAプログラム」だ。社会に出てからも主体的に学び続けるための確かな学習習慣を身に付けるには、自ら課題解決できる「主体性」の育成から始める必要があると考え、担任との日常的なコミュニケーションをベースとしてPDCAを回すプログラムを企画。その開発と運営には、パートナー企業と協働で当たっている(図1)。 「社会で必要な力の育成を目指すとき、学校にない発想や手法も必要です。プログラム実施担当者は、実際の企業研修を見学し、教員同士も同様の研修を体験。まず私たち自身がPDCAを回せるようになることを目指しています」(学力向上プロジェクト長・小山祥史先生) また、現場から発生するプロジェクトもある。授業改革には4年前から取り組んでいるが、このところ急速にPBL型授業実践やICT活用が拡大してきた。この動きを牽引しているのは、自然発生した教員ネットワークだ。SNSを使って日々情報交換し、予告なしに先輩教員の授業を見学したり、自ら他の教員に声をかけて授業を見てもらい批評を乞うなど切磋琢磨しながら授業改善に取り組んでいる。 「経験値の少ない若手の先生であっても、メソッドやマインドを学ぶことでより良い授業実践は可能。それを信じて試行錯誤しながらも前向きに学ぶ先生が増えていると感じます」(田代先生) 同校のスピード感ある進化の背景として、もう一つ特長的なのが、事務職員の積極的な登用だ。事務局次長・村松 誠さんは、自らの役割を「ビジョンをつくり革新を起こすこと」という。これからの学校のあり方について管理職らとも議論し、共にビジョンづくりに取り組む。また、日常的な教員とのコミュニケーションからそれぞれの興味・関心の分野を把握。新しい教育の潮流や社会の動向について情報を仕入れると、興味をもちそうな教員に耳打ちする。 「生徒との接点をもたない私は一人では何もできない。しかし、先生たちの心に火を点けることで、大きなムーブメントを起こすことができるのでは」(村松さん) 事務職員の登用は、どの学校でも必要な視点に思われる。 「事務職員も学校スタッフとして強みを発揮できるよう、事務職と教員がお互いの文化を尊重し連携できる関係性への配慮も、校長の役割として大切にしています」(星野校長) 創立50周年を機に始めた新しい学校づくりだが、星野校長が目指すのは「一時的なキャンペーンではなく永続的なカルチャー」だ。未来に目を向け自らも成長に意欲的な教職員の姿からは、今後も衰えないであろう勢いが伝わってくる。 「一つ新しいことを始めて世界が広がると、『もっとこうしたい』が出てくる。そのマインドを絶やさず、進化し続ける学校でありたいですね」(星野校長)2年前、ビジネス界から転身し、今が一番楽しいと言えるほど充実。得意なことを自由にやればいいと言ってもらえるので、私の得意である企画的なことに、責任感をもって全力で取り組んでいます。「まずやってみよう、失敗したら改善すればいい」という雰囲気があるから、新しいことに取り組みやすい。一歩踏み出すと今までと違う楽しさや発見があり、人間力が育てられていると感じます。新しいことをするのが好き。英語が得意でなくても何度も海外研修を引率。国語の授業でミニ四駆を題材として扱ったことも。今後は英語以外の教科の授業を英語で行うこともやってみたいですね。田代正樹先生小山祥史先生村松 誠さん新しいことに次々挑戦中失敗を恐れず一歩踏み出せる得意を発揮して全力疾走改革の主体となった先生たちは…タイやインド、バングラデシュなどの10校により9日間の日程で開催した「国際未来共創サミット」。自ら手を挙げた同校生徒が運営に参加し、ワークショップや文化交流などを展開した。PDCAサイクルにより「主体性・思考力・学習習慣」を段階的に育成。生徒はノート(「パーソナルレコード」/右図)に日々の学びを言語化し、教員とやりとり。節目にはHRで成功体験等をまとめ生徒同士で共有する。教員研修の様子。PDCAプログラムのなかで生徒が取り組む、肯定的なメッセージを送り合う「ポジティブ・イット」を、まず教員が体験。分掌・年度にとらわれないプロジェクトで課題解決教職員の成長マインドにより進化を続ける学校へパーソナルレコードを活用したPDCAプログラム図1取材・文/藤崎雅子生徒記入欄(今日はどんな学びや、スモールサクセスがありましたか?/明日はどんなチャレンジをしてみたいですか?)の下に、先生からのコメント欄がある「未来を創る主体」を育む学校づくりへ静岡聖光学院中学校・高校(静岡・私立)272019 OCT. Vol.429

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