キャリアガイダンスVol.429
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変革のリソースは先生たちの中に。学校づくりの第一歩を対話から始める 学校づくりの進め方といえば、一般にイメージされやすいのは「問題解決のアプローチ」かもしれない。①問題を特定し、②原因を分析、③解決策を検討し、④行動計画を立てる。「生徒の主体性が低い、その原因は授業にある、解決 そしてそんな学校づくりの鍵を握るのが〝対話〞なのだという。「よし、みんなで理想の学校を考えよう」。せっかくそう思い立ったとき、〝上辺だけの会話〞で終わってしまわないように。 〝対話〞と〝上辺だけの会話〞。 その違いは、金井氏が教員時代にまさに実体験したことだった。かえつ有明中・高校で、学校づくりといえるプロジェクトに10名の先生で取り組んだときのことだ。当初は、先生同士の腹の探り合いとなり、議論が深まらなかったという。 「このままでは良いものを創れない。もっとお互い本音を出せるようになりたい。そう思った僕らが始めたのが、NVC(※)の理論などを踏まえ、対話することだったのです」 その対話とは、ざっくり説明するなら、話すこと・聴くことを通して、相手策としてアクティブ・ラーニングを、こんな計画で導入しよう」といったように。 東京大学で教員の変容を研究している金井達亮氏は、これに対して別の進め方を提案する。「対話による組織開発のアプローチ」だ。対話をベースに、①自分たちの強みや価値を発見し、そのリソースを基に、②未来の可能性を想像し、③実現方法を考案、④実行と持続を目指す。 「問題解決のアプローチをするなら、本来、問題意識は自分たちの内側から出るべきですが、学校では『外から示された教育課題』の解決を目指しがちです。その課題が本当に現場の切迫した問題かはわからず、乗れない先生も出てきます。しかも先の見えない時代、問題とされることも常に移ろいます。ですから、〝今いるメンバー〞の強みや価値を見出し、その時代の自分たちにできる理想の学校を目指すほうが、現実的であり、先生たちも楽しいと思うのです」への理解を深め、自分を省み、お互いに受容された喜びも感じながら、関係の質を高めるというもの。 金井氏らは、学校づくりという命題を思い切っていったん脇に置き、対話によって「お互いを理解する」ための1泊2日の合宿を行った。それを機に本音を言える関係ができてくると、先生同士が自発的に楽しそうに話し合うようになり、プロジェクトは一気に進展したという。こうした変化は、ダニエル・キム氏の提唱する「組織の成功循環モデル」にも当てはまるものだ(図1) 次のページからは、そうして対話を重ねるためのいくつかのアプローチをご紹介したい。金井氏としては、これらを「やりたい人でちょっとやってみよう、という感じで始めていただければ」と思っているそうだ。学校づくりを嫌々ではなく、ワクワクしながら進めてほしいからだ。例えば自主勉強会から、または学年団や分掌の先生で。もちろん、チャンスがあれば全体研修でも。東京大学大学院教育学研究科学校教育高度化専攻教職開発コース金井達亮氏かえつ有明中・高校(東京・私立)で、他の先生と共に高等部の「プロジェクト科」のコンセプトづくりから授業づくりまで携わる。2018年に退職し、東京大学大学院に進学。組織の成功循環モデルは、組織が成功に向かうサイクルを示したもの。「関係の質」を高めて、お互いを尊重し一緒に考えると、気づきが増えて「思考の質」が高まり、面白いので自発的に動くようになって「行動の質」も高まり、「結果の質」も伴ってくる。学校づくりを「しないといけない」と考えると、「どうすれば」「誰もやってくれない」など困惑や不満が渦巻きます。教員として学校づくりに携わり、現在、大学で教員の変容を研究している金井氏に、別のアプローチを伺いました。自分たちの強みや価値を学校づくりに生かしていく対話で関係の質が高まると思考や行動が熱を帯びる組織の成功循環モデル関係の質思考の質行動の質結果の質取材・文/松井大助(※)NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)……共感をもって臨むコミュニケーションの手法。心理学者のマーシャル・B・ローゼンバーグ氏が体系化。組織の成功循環モデル(MIT教授 ダニエル・キム)図1282019 OCT. Vol.429

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