キャリアガイダンスVol.429
3/66

希望の道標取材・文・撮影/山下久猛 2016年にWELgeeという団体を立ち上げ、紛争や迫害など、やむをえない事情で祖国を離れ、日本に逃れて来た難民の活躍機会を作る活動に取り組んでいます。 このような活動をするようになった原点は私が育った家庭環境にあります。私の両親はNPOを設立して、居場所がない人や悩みや生きづらさ、孤独感を抱えている人なら年齢性別問わず、誰でも受け入れるコミュニティスペースを運営していました。家に帰れない子は自宅に住まわせていたので、常に私とは育った環境も性格もまったく違う人が自宅にいました。こういう体験からもっと人間や文化、社会について学びたいと思い、静岡文化芸術大学の文化政策学部に入学。在学中にバングラデシュの先住民族の村に2年間滞在して活動しました。この地域は同じバングラデシュの軍事化政策と迫害により、紛争状態にありました。当時の政府はこの紛争を解決したということでユネスコの平和賞を受賞していたのですが、実際に行ってみるとまだ迫害は続いていて、村民は苦しんでいました。これらの経験から、なかったことにされている“声なき声”を見過ごさず、社会という生態系の中にちゃんと繋ぎたいと強く思ったのです。 帰国後、あるコンゴ人難民と出会いました。彼は、数カ国語を操り、さまざまなスキルをもったハイスペック人材でした。また、高邁な夢や目標をもち、治安が安定して帰国したら祖国のために尽くしたいという強い意思をもっていました。 そんな彼も、日本ではなかなか難民として認定されず、働くことも認められません。だから一日中、山手線の電車に乗ってぐるぐる回ったり、ファストフード店でただぼんやりと過ごすという生活をするしかないんです。これってすごくもったいないですよね。もし彼らが能力やスキルを活かして働くことができれば彼ら自身も生き生きと生きられるだろうし、日本社会にとっても大きなメリットがある。 そのためにまずは難民と日本人を繋げようと、食事会や富士山登頂など、いろんなイベントを企画したり、難民ホームステイを実施しました。現在は難民のキャリア支援や、企業に対して難民雇用に関する研修を行ったりしています。 これまで私たちが支援し、企業と繋いだ若者たちの中には、もともとコンピュータサイエンスを勉強していて、日本企業でプログラミング技術を活かしているシリアの若者や、ゼロからコーディングを学んでITのベンチャー企業に就職してバリバリ活躍しているアフガニスタンの若者たちなどがいます。市場の労働力不足を埋めるだけではない。それぞれの活躍機会は別の形で存在します。年々、このようなケースが増えています。 私たちは難民を助けてあげるためではなく、その難民と日本社会を繋ぐことによって個人も社会全体もより良くなればいいという思いで取り組んでいるんです。 高校生の皆さんは、進路選択の時期には先生や親から「将来の職業を考えて大学や学部を選びなさい」と言われると思いますが、職業なんて単なる手段に過ぎないし、皆さんが社会に出るころには選択肢が増えているかもしれません。私自身、なりたい職業なんてずっとわからなかったし、今も職業名を答えるのは難しい。ただ、私は仕事を通して、人のパッションを応援し、誰もが“自分”を生きていいんだよ、と言える大人になりたい。その思いだけは、大事にしています。皆さんも、何かに対してやってみたいという感覚をもっているなら、それに名前がなくても、既存の選択肢に当てはまらなくても、その方向に進んでほしい。そうすればきっと、納得感のある人生になると思うので。1991年静岡生まれ。さまざまな背景をもつ子どもたちが出入りす1991年静岡生まれ。さまざまな背景をもつ子どもたちが出入りするNPOの実家で育つ。大学時代は2年間バングラデシュの紛争るNPOの実家で育つ。大学時代は2年間バングラデシュの紛争地にてNGO駐在員、国連開発計画(UNDP)インターンとして平和地にてNGO駐在員、国連開発計画(UNDP)インターンとして平和構築プロジェクトに携わる。2016年、難民の仲間たちとWELgee構築プロジェクトに携わる。2016年、難民の仲間たちとWELgeeを設立。代表としてさまざまな活動を率いると同時に、東京大学大を設立。代表としてさまざまな活動を率いると同時に、東京大学大学院 総合文化研究科修士課程で人間の安全保障について研学院 総合文化研究科修士課程で人間の安全保障について研究している。トビタテ!留学JAPAN一期生。グローバル・コンソー究している。トビタテ!留学JAPAN一期生。グローバル・コンソーシアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award シアムINCO主催『Woman Entrepreneur of the Year Award 2018 (女性起業家アワード2018)』で、グランプリ受賞。2018 (女性起業家アワード2018)』で、グランプリ受賞。わたなべ・さやかわたなべ・さやか仕事を通して、人のパッションを応援し誰もが“自分”を生きていいんだよ、と言える大人になりたい。難民と未来をつくるNPO代表/渡部清花32019 OCT. Vol.429

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る