キャリアガイダンスVol.429
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取材・文/笹原風花一からつくり直さないといけないという状況のなかで、子どもたちにも主体性を発揮し、責任をもって新しい生活の創造に貢献していくことが求められました。その様子を目の当たりにした私たちは、子どもたち自身が「受動的な学習者」から「能動的な創り手」へと変わらなければならないことを強く感じたのです。 Education 2030プロジェクトの第1期は、カリキュラムの見直し・再構築と2030年に向けた学びのフレームワークのコンセプト作成に重点を置いてきました。そして、その集大成として、この度「The OECD Learning Compass 2030〈OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030〉」を公表しました。 これは、2030年に向けて、生徒たちがどのようなコンピテンシー(資質・能力)をどのように身に付け、どのようなステークホルダーと協働しながら何を目指すのか、を描いた世界基準のコンセプトマップともいうべきものです。ただし、これは人々に何かを強要するものではなく、人々にインスピレーションを与えたり、生徒のことをより深く知ったりするためのツール 世界的に急速な技術革新が進むなかで、社会の構造が大きく変わり、新たな社会課題も多く生まれています。変化が激しく行く先が不確実な時代に、AI(人工知能)に取って代わられない人間固有の力にはどのようなものがあり、そうした力はどのようにして育成できるか、さらに、どういった指導法や評価の仕方が有効であるかといった問題提起が、世界中の国々でなされるようになりました。そこで、国を越えて問題意識を共有して意見を交わし合い、国際的な視点をもって「教育」や「学び」について考えていこうということになり、OECD内に「Future of Education and Skills 2030 project(以下、Education 2030プロジェクト)」が立ち上がりました。 本プロジェクトにおいて最も重要な概念となるのが、〝Student Agency(生徒エージェンシー)〞です。Agencyとは、主体的に考え、行動し、責任をもって社会変革を実現していくという意志や姿勢を意味します。このStudent Agencyの原点となったのが、2011年の東日本大震災後にOECDがサポートに入った際の経験です。経済や産業、暮らしの枠組みを世界基準の学びの概念地図「Learning Compass 2030」東日本大震災後に求められた〝Agency〞を世界へOECD(経済協力開発機構)では2015年に「Future of Education and Skills 2030 project」を立ち上げ、2030年に向けて子どもたちに求められるコンピテンシー(資質・能力)や、それを育成するための学び方やカリキュラム、指導法について検討を重ねてきました。これは、新しい日本の学習指導要領にも大きな影響を与えています。第1期の集大成として、2019年5月には「The OECD Learning Compass 2030〈OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030〉」が公表されました。そこで重視されている“Agency(エージェンシー)”の概念や、“Learning Compass”とはどのようなものでどう活用するものなのかについて、OECD教育・スキル局長のアンドレアス・シュライヒャー氏にお聞きしました。これからを生きる子どもたちには、身に付けた資質・能力を使ってより良い社会を創造する“主体”となってほしいアンドレアス・シュライヒャー OECD教育・スキル局 局長ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)322019 OCT. Vol.429

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