キャリアガイダンスVol.429
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だということに留意していただきたいと思います。Learning Compassに従うのではなく、自分たちがこれまでにやってきたことを当てはめたり、何かを始めるときに参照したりして、その価値や方向性を確認するために活用してほしいのです。 Learning Compassの針に当たるのが、「知識」「スキル」「態度・価値」というキーコンピテンシーです。これらは学びの核となる「Core foundations(学びの基礎・基盤)」で、リテラシー(読解力)や数学的リテラシー、心身の健康、道徳的・倫理的・社会的な人格面の素養、意欲、学びへの姿勢などを含みます。また、ここでいう知識やスキルは、過去に一般的に定義されていたものとは異なり、「覚える・習得する」という受動的な学びではなく、「新たな知を生み出していく」という能動的な学びが必要とされていることにも留意してほしいと思います。 Core foundations の外側に描かれているのが、Transformative competencies(より良い未来の創造に向けた変革を起こす力)です。これは、生徒たちが社会に貢献し、より良い未来をつくるために必要な資質・能力であり、「Creating new value(新たな価値を創造する力)」、「Reconciling tensions & dilemmas(対立やジレンマに対処する力)」、「Taking responsibility(責任ある行動をとる力)」という3つの力を挙げています。「新たな価値を創造する力」というのは、より良い人生や社会を実現するためにイノベーションを起こす力であり、AIやコンピューターが不得意なことでもあります。「対立やジレンマに対処する力」というのは、世の中を二項対立的な視点で捉えるのではなく、対立やジレンマのあるなかで合意形成して最適解を見つけていく力であり、不確実な世の中を渡り歩いていくために必要な力です。また、「責任ある行動をとる力」というのは、他者との協働や環境への配慮といった道徳的な視点をもって自分の行動を振り返ったり価値づけたりできる力のことです。 さらに、「より良い未来の創造に向けた変革を起こす力」を伸ばしていくためのサイクルが、「Anticipation(見通し)・Action(行動)・Reflection(振り返り)」のAARサイクルです。これは、闇雲に行動するのではなく、自分の行動がどんな事象につながるのかという見通しをつけ、責任をもって行動を起こし、その行動を振り返って次につなげることが重要だということを意味し求められるのは、より良い未来の創造に向けた変革を起こす力The OECD Learning Compass 2030 〈OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030〉図1OECDのEducation 2030プロジェクトのホームページでは、The OECD Learning Compass 2030のコンセプトを描いた動画が公開されています。「未来を創る主体」を育む学校づくりへ「The OECD Learning Compass 2030」に見る“Agency”とは?332019 OCT. Vol.429

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