キャリアガイダンスVol.429
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ナーシップをもち、主体的に考え、行動し、良い変化を起こしていく人になってほしいと思います。 先生がオーナーシップをもって、主体的に…と言われると、負担を感じるかもしれません。しかし、TALIS(OECD国際教員指導環境調査)の報告によると、日本の教員の約9割が、教員になる際の動機として「教職に就けば、子供や若者の成長に影響を与えられるということ」を挙げています。Learning Compassで提唱しているコンセプトは、先生方にとっては初心を思い起こさせるもの、本来やりたかったことをサポートするものなのではないかと思います。これを追い風と捉えて、前向きに進んでいってほしいと願っています。 また、日本の先生たちには、教科指導だけでなく生徒指導・生活指導にも力を入れているがゆえに生徒との距離が近い、教員同士の連携に長けている、といった強みがあります。こうした強みを活かして「生徒が学ぶ環境を創る人」へと変わっていくことで、教員間の協働に限らず、学校外とのコラています。教員の方々にとってAARサイクルは、指導法を考えるうえでも有効なものとなるはずです。 図1にあるように、生徒はこのCompassを参照しながら、自身のAgencyを育て、発揮していきます。Student Agencyは、自分の人生や自分を取り巻く世界に良い影響を与える力や意志が自分にはあるのだ、つまり、自分が主体なのだ、という信念に基づいており、目標や進むべき方向を設定する力、変革を起こすために責任ある行動を取り、その行動を振りボレーションにもつながるのではないかと期待します。 The OECD Learning Compass 2030は今後、世界各国の教育にインスピレーションをもたらすことになるでしょう。例えば、Learning Compassを我々OECDと共に作ってきた仲間であるポルトガルやカナダでは、既にこのコンセプトを教育に関する法律やカリキュラム、ガイドラインなどに活かし、実際にアクションにもつなげています。これまで、教育や学びのカリキュラムは各国が独自に作ってきましたが、今後はLearning Compassが提示する概念に基づきグローバルにディスカッションを重ね、またLearning Compassの各要素の概念についてもさらに深めていきたいと考えています。 今年度からは、Education 2030プロジェクトの第2期がスタートしました。第2期は2030年に向けた「指導法」に重点を置いています。指導法を議論するうえでは、現場の先生方の実践知やモチベーション、そして率直な意見が不可欠です。私たちも先生方や生徒たちと共創していきたいので、日本の皆さんの声をぜひ届けてほしいと願っています。返ることのできる力を意味します。 そして、Student Agencyに伴走するのが、仲間、教師、家族、コミュニティなどのCo-Agencyです。Co-Agencyとは、生徒が目指す目標に向かって進むのを主体的かつ協力的に支え、協働することを意味します。これからの時代は、他の人々とコラボレーションして個人を超えた社会的集合体として大きなビジョンに向かいつつ、主体的にコンピテンシーを発揮していくことが求められるのです。 人々にはそれぞれ望む未来の姿があるでしょうが、共通の目標は社会のWell-being(より良くあること)です。何のためにAgencyを身につけ発揮していくのか。それは、より良い社会を実現するために他ならないのです。 これからの時代は、先生に求められる役割も変化します。カリキュラムに書かれたことを教える人から、カリキュラムのオーナー、実践者へと変わらなければなりません。先生自身がオー教える人から創る人へ先生に求められる役割も変わる教育や学びをグローバルにディスカッションしたい先生自身がオーナーシップをもち、主体的に良い変化を起こしてほしいさまざまな人々と協働し、より良い社会の創造を志す「The OECD Learning Compass 2030」に見る“Agency”とは?「未来を創る主体」を育む学校づくりへ342019 OCT. Vol.429

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