キャリアガイダンスVol.429
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ル局シニア政策アナリストの田熊美保氏から発信されたのが、「ここにいる皆さん自身が、新たな概念、価値の作り手であるという意識をもってほしい」というメッセージだ。例えば、〝エージェンシー〞というのはひと言で言い表すことが難しい概念であり、国や文化によって受け止め方も多様だ。「エージェンシーとは何か?」という問いを立て、解釈や実際の学びに落とし込んだ際の在り方などについて一人ひとりが考え、意見を出し合い、共有することが重要だということが強調された。 ラーニング・コンパスについては、福井大学の木村優准教授をモデレーターに、OECDの田熊氏、ISNのOGで筑波大学生の中畑 希さん、福井県立若狭高校生の竹内陽はる渚なさんがディスカッションを行いながら紹介された。田熊氏から中畑さん、竹内さんへは予め「あなたにとって〝Student Agency(以下、「生徒エージェンシー」)〞とは何を意味するか?」という問いが出されており、二人はそれぞれ次のように答えた。 「生徒が、自分がやりたいことに堂々と挑戦していいんだという根拠や後押しになるような概念ではないだろうか。私自身、さまざまな活動に参加して 2日間にわたって行われた研究会では、〝Agency(以下、「エージェンシー」)〞、〝Transformative competencies(以下、「より良い未来の創造に向けた変革を起こす力」)〞といったEducation 2030プロジェクトで議論・提示された概念について理解を深めるワークショップに時間が割かれ、これらを概念図化した「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」(以下、ラーニング・コンパス)についても紹介された。ISNでは国内外の研究会やフォーラムに生徒が主体的に参加しており、今回の研究会でも、生徒が大人と対等な立場でディスカッションに加わり、プレゼンテーションなども行った。 研究会を通してOECD教育・スキ参加者自身が新たな概念の創り手だという意識をもつ高校生、大学生が考える生徒エージェンシーとは?※詳しくはISNのホームページを参照 https://innovativeschools.jp/ OECD日本イノベーション教育ネットワーク(Japan Innovative Schools Network supported by OECD:以下、ISN)は、OECDの協力の下に生まれた産学コンソーシアム。OECDによる東日本大震災後の復興支援プロジェクトの一つ「OECD東北スクール」の流れを受け継ぐかたちで、2015年に設立された。福島大学と東京大学が中心となり、OECD、大学、全国の高校・高専や中等教育学校、教育委員会、文部科学省、企業、海外の教育機関や研究者などが広くネットワークを構築し、教育や学びの研究・実践を共有する場として機能している。また、OECDでの議論にも積極的に関わり、日本の教育現場の事例の発信を含めて加盟各国と情報を共有している。 研究・実践の中心となるのは、高校・高専や中等教育学校。海外校と協働しながらPBL(Project Based Learning)を軸としたアクティブ・ラーニングを構築・実践し、「ラーニング・コンパス」が示すコンピテンシーやエージェンシーをいかに育むかに取り組んでいる。第2期(2・0)である現在は、海外のパートナー校を含めて約50校が研究校・実践校として参加している。OECD日本イノベーション教育ネットワークとは?日本において「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」の浸透・活用を推進するのが、「OECD日本イノベーション教育ネットワーク(ISN)」です。8月に福島大学にて開催された「ISN2.0第4回研究会」での議論、およびその概念を体現しているISN参加校の事例から、日本における未来を目指した学校づくりへの活かし方について探ります。多くの普通の学校で未来を目指した学校づくりを進めていくために~「OECDラーニング・コンパス2030」の概念を日本の学校教育へ活かす~352019 OCT. Vol.429

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