キャリアガイダンスVol.429
41/66

 進路探究は進路希望によって課題や狙いが異なるため、大学、短大・専門学校、就職、公務員を別々のカリキュラムで、高校2年の総合的な探究の時間(ツール1)を使って実施している。 大学希望者向けのカリキュラムは、高校で興味をもった課題に取り組み、その解決のために必要なことが学べる大学へ進学した卒業生たちの、高校当時の試行錯誤のプロセスを意図的に再現できるように組み立てている。 例えば「日本史の教科書にはなぜ男性ばかりが登場するのか?」という素朴な疑問をもっていた生徒は、担任の先生の薦めで『女性のいる近世』という本を読み、身分の低い女性たちが実は歴史の裏で活躍していたという史実を知ったという。それを現代社会の女性を取り巻く問題を解決するヒントにしたいと考え、関連することが学べる大学の学部へ進んだ。 このように意識せずとも自分自身で課題設定を行い、それに取り組むことでさらに探究したいことができ、それが進路につながっていった卒業生を調査。彼らは皆、 栃木県立小山南高校は、1学年に普通科とスポーツ科が2クラスある進路多様校。進路先とのマッチング指導や志望理由書指導、進路指導部面談など、退学や早期退職を防ぐため、学年の枠を超えて生徒に寄り添う丁寧な進路指導を行ってきた。 一方で、2年ほど前から、今後取り組むべき探究学習をどのようにするかという検討を開始。進路指導部の神田剛一先生が中心となり、課題研究という名で実施されている全国の先進事例を調査した。「多くが学力層の高い進学校の事例で、そのまま取り入れて本校で実践するのは難しいと感じました。特に解決すべき課題を見つけることのハードルが高かった」と神田先生。また、教員の負担増も懸案事項だった。 そんななか、過去の卒業生に、社会の課題に目を向け解決に取り組みよりよい社会を目指そうと大学進学にチャレンジしてきた生徒たちがいることを思い出した。彼らの試行錯誤のプロセスが「探究」そのものであると考えた神田先生は、同校の探究学習のテーマを「自らの進路」とすることで、生徒が与えられた課題よりも自分事として取り組むことができ、教員もこれまで力を入れてきた“志望理由につなげる進路指導”になるため大きな変更の負担をなくせると確信。卒業生へのインタビューや進路希望別の生徒の課題整理などを経て、自分の進路を社会の課題や実態と結びつけながら具体化していく進路探究学習を設計し、昨年度よりスタートさせた。小山南高校(栃木・県立)取材・文/永井ミカ興味分野についての探究を繰り返すことで、自分が学び関わる意味を深めるツール1進路希望別進路探究実施計画大学希望短大・専門希望就職希望公務員希望1回目進路ガイダンス(70分)感想・次回以降の事前指導(30分)2回目パンフレットによる学校研究パンフレットによる学校研究3年内定者との進路懇談公務員試験対策講座3回目分野研究短大・専門学校講演会/事前指導ワーク業界・企業研究3年公務員面接試験対策直前指導見学・参加4回目分野研究業界・上級学校研究業界・企業研究公務員試験対策講座5回目分野研究業界・上級学校研究業界・企業研究公務員試験対策講座6回目分野研究業界・上級学校研究総括/指導/まとめ指導業界・企業研究総括/指導公務員試験対策講座進路別に4分野、各6回。今年度は2年生10月から11月にかけて実施。「今後は同じ回数でも初回から最終回までの間隔を長くして、じっくり時間をかけて考えられるようにしたい」と神田先生。大学進学36人、短大進学6人、専門学校45人、就職60人、その他5人大学進学、短大・専門学校進学、就職と進路が多様。その割合もあまり変わっていない。進学希望者には学力アップのための指導を行う一方で、地元企業への就職にも力を入れ地域活性化に貢献している。創立1979年/普通科・スポーツ科/生徒数475人(男子268人・女子207人)412019 OCT Vol.429

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る