キャリアガイダンスVol.429
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こいずみ・はじめ1954年生まれ。1977年、京都大学理学部数学科卒業後、母校である六甲中学・高校(現・六甲学院中学・高校)に赴任。2009年教頭、2015年より現職。2019年より学校法人上智学院理事。2000年ごろから、育てたい生徒像検討のための六甲生プロファイルに取り組み、現在の教育目標である六甲学院ミッションステートメントを作成。新校舎建築委員長も務め、ソフト面、ハード面の双方から学校改革を推進。学生時代から友人たちに勉強を教えるのが上手で「教員に向いている」と言われていた。教員歴10年目ごろに、先輩教員から言われた「担任の影響を受ける生徒はせいぜい1割。生徒は教え込むのではなく、自ら育っていくもの。教師はその手助けをする存在」という言葉で、教員の原点に戻れたと語る。 本校の教育の基本にあるのはイエズス会教育の考え方です。イエズス会は16世紀にイグナチオ・デ・ロヨラがフランシスコ・ザビエルらと共につくったカトリックの修道会で、教育にも早くから力を入れていました。現在の学校教育では普通になっている、学年制や学習にあたっての適切な順序を考えたカリキュラムの作成を始めたのもイエズス会です。現在では世界67カ国で1000を超える中等および高等教育機関・大学で学ばれています。イエズス会教育の特徴である〝men and women for others, with others〞を基に、本校では「他者と共に生き他者に仕えるリーダー」の育成を目標としています。 昨今は教育改革や学校改革など「改革」という言葉が氾濫し、変えること自体が目的化しているように感じることがあります。大事なのは、より良く変わっていくこと、つまり「成長」することです。ビジョンをもって、理想に向かって一歩ずつ成長していくことが、イグナチオが唱えていた教育の本質で、卒業後も自ら自分を成長させていける人間を育てていきたいと考えています。 470年以上前から続いているイエズス会教育の理念は、現在の文部科学省の教育改革の骨子である、他者との協働や、学びに向かう力・人間性等の涵養、生涯学び続ける力などと同様の方向を示しており、古いけれど時代を超えて普遍的につながるものなのです。2016年に、本校を含むカトリックイエズス会を経営母体とする5つの学校法人が合併し、「学校法人上智学院」として幅広い教育ネットワークを構築、イエズス会教育をさらに深化させていくこととなりました。 イエズス会教育の学びの方法に「体験↓振り返り↓実践」のサイクルがあります。本校では特に振り返りを重視し、授業や学校行事などのあらゆる教育活動で振り返りを行い、そこでの気づきを論文にまとめたり、プレゼンをするなど主体的な学びに結びつけています。 さらに、本校は権限委譲を伝統としています。ひとつは教員から生徒への権限委譲で、生徒の主体性が育っていることに外部から高い評価を頂いています。例えば、体育祭や文化祭などはすべて生徒主体で計画、実施していたり、土曜日の朝礼は生徒が司会をして「より良い学校にするには」など、教育について生徒自ら考え、発表しています。また、高校2年生が中学1年生の指導員として、勉強から生活面まで面倒を見るメンターとして活躍しています。 私自身も仕えるリーダーとして、現場の先生たちに権限委譲しています。校長は縁の下の力持ちであるべきで、先生たちを信頼し、任せることで学校全体の活性化につながり、次のリーダーが育っていくと思っています。 今後は、学校法人上智学院のネットワークを活用して、高大連携やグローバル教育をさらに推進していきたいと考えています。470年続くイエズス会教育は現代の教育改革につながっている権限委譲により、生徒は主体性が育ち教員は次のリーダーが育つまとめ/長島佳子 撮影/渡辺ヒロシ1937年、イエズス会の中等教育の場として5年制の六甲中学創立。1947年より中高一貫校に。歴史ある進学校である一方、人間教育にも力を入れている。2016年にカトリックイエズス会を母体とする学校法人の合併により学校法人上智学院となり、上智大学との高大連携のカリキュラムも広がっている。六甲学院中学・高校(兵庫・私立)イエズス会教育を推進し、イエズス会教育を推進し、卒業後も成長し続け卒業後も成長し続け他者に仕えるリーダーを育成他者に仕えるリーダーを育成古泉 肇六甲学院中学・高校 校長442019 OCT. Vol.429
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