キャリアガイダンスVol.429
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462019 OCT. Vol.429生徒:志願書に自己PRを書けってあるけど、何も書けない…先生:何もないっていうことはないだろう。自分の良いところ、長所とか。生徒:え~、そんな自慢できるようなことないなあ。先生:がんばったことを書くのでも、いいんだぞ。生徒:部活も入っていないし、これといってがんばったことがないよ。先生:みんなで合唱コンクール、がんばってたじゃないか。生徒:ん~、でも、ふつ~に練習付き合っただけで、自分ががんばったって感じじゃないし…生徒:高校生活でがんばったことを書きなさいってあるけど、ちゃんとやり切ったことがなくて…先生:そうか? 先生からすると、いつもクラスのためにがんばってくれているなって思うぞ。生徒:だけど、いつも詰めが甘いっていうか、失敗ばっかりしてる。先生:修学旅行のとき、班のまとめ役やっていたじゃないか。生徒:でも、結局、うまくまとめられなくて、○○ちゃんが仕切ってくれて何とか乗り切ったし…生徒:志望動機を書こうと思ったけど、全然思い浮かばなくて。かえって、この仕事は自分には無理なんじゃないかって、不安になってきた…先生:誰でも、やったことがないことには不安を感じるものだよ。生徒:でも、結構仕事のうえでも勉強しないといけないらしいって聞いたし。自分、勉強苦手だし。先生:ちゃんと会社が研修とかしてくれるんだろ? みんなそうやって成長していくんだから、大丈夫。生徒:…ケース1ケース2ケース3大したことをしてこなかったから自己PRが書けないという生徒いつも失敗ばかりで、何かを成し遂げたことがないと悩む生徒将来うまくやっていく自信がなくて、志望動機が書けず立ち止まる生徒感情を受け止め、客観的に自分を整理する手助けを 生徒がポジティブ感情を抱けるようになるには、まず「書けない」という気持ちをしっかり受け止めてもらえる「安心感」が大切になります。「できない」「わからない」という相談に、「そんなことはないよ」と答えてしまっては、逆効果です。「そうなんだ。書けなくて困っているんだね」と感情の共有ができてこそ、先生の話も耳に入るようになります。 このような「何もない」と決めつけている場合は、「できないこと、苦手なこと」「できること、自信があること」を、それぞれ挙げて書き出すように促すと、自分の事実が客観視でき、自信の回復や、強み・弱みの自己理解を深めることにつながっていくはずです。失敗を振り返り考えることが、レジリエンスのトレーニングに将来への過剰な不安や心配よりも、「今、ここ」に意識を戻す ポジティブ心理学のキーワードでもある「レジリエンス(回復力)」は、物事を前向きに捉えていくうえでは重要な概念です。嫌なことや、ストレスがかかるような状況を、ないものにするのではなく、そこに向き合ったときにどれだけ回復することができるか。そのためにも、失敗体験を振り返り、分析してみることは重要なことです。 また、振り返りの過程のなかで、「失敗はしたが、そこで何を学んだか。得たか」を考えてみると、次への改善や助けてくれた人への感謝を実感することもあるでしょう。「失敗だったけど、良い経験だった」という良い意味での前向きな視点にできるといいでしょう。 先々のことを考えて不安になったり心配したりするのは当然のことで、心配だからこそ準備がしっかりできるという意味で、大切な感覚です。つまり等身大の不安は歓迎すべきことですが、不安や心配が大きくなりすぎて身動きできないほどになってしまうのは、逆効果。その場合は「今、ここ」のマインドフルネスが効果的です。その際、大事な人を思い浮かべて「迷惑かけたこと」「してもらったこと」「して返したこと(感謝)」を考えていくといった、つながりと感謝に焦点を当てた内観法のエクササイズなども、ポジティブ心理学で重要とされるRelationshipsへの気づきにつながります。
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