キャリアガイダンスVol.429
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 全国の全日制公立高校約3400校のうち、3学級以下の高校は約150校(※)。その中の1校、山形県立小国高校は、各学年1学級規模の小さな学校だ。この夏、同校が開催した「第2回全国小規模校サミット」には岩手から熊本までの18校131人の高校生が集って交流し、議論を交わした。 サミットのテーマは「小規模校同士、誇りを持ち、かかわりあいで新たな発見を」(下図)。ホストするのは、小国高校の全校生徒72人。プログラムは、参加校の生徒による取組プレゼンテーションから始まり、東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科長、岡崎エミ氏による講演を受け、小規模校だからこそできることを話し合うワークショップへと続く。前夜には、郷土料理を囲みながら交流する場も設けられた。 三重県から生徒を引率した飯南高校の土方清裕校長は「物凄く熱いセッションが続き、たった1日で生徒たちが響きあい高めあって成長しているのがビシビシ伝わってきました。それを支えているのが小国高校の生徒のレベルの高さ。全体のファシリテーションも、20以上あるグループの各ファシリテーターも、3つの分科会のグラフィックレコーダーもすべて小国高校の生徒が見事にやっていました。全校生徒が80人を切る学校です。これは本当に凄い」と振り返る。 地域の人口減少や統廃合の可能性…先行きの不透明さや、少人数で部活動に制約が出るなど、中山間地域の小規模校には共通する課題がある。小国高校もまた、狭い人間関係、学校の良さよりマイナス面に目が向きがちで自信をもてないといった課題が、保健室利用の多さにも表れていた。 そんな生徒たちが大規模なイベントを成功させるまでには、何があったのか。きっかけは、2年前の岩手県立花泉高校との交流だった。広い世界があることも同じような悩みをもつ高校生がいることも知った生徒は「楽しかった」「またやりたい」「岩手と交換留学をしたらどうか」とそれまで見せなかったような意欲を口にした。「またこの輝きを見たい」と同僚に働きかけ、生徒の後押しをし始めたのが板垣祥和先生と養護教諭の小松千穂先生だ。 訪問するとお金がかかる、であれば来てもらえば良い。どうせならたくさんの学校に来てもらおう。自信をもちきれていない生徒が、小規模校でしか味わえないことに価値を見出せるよう1948年創立/普通科/生徒数72人(男子37人、女子35人)/進路状況(2019年3月卒業)大学短大6人、専門学校9人、大学校1人、就職13人、公務員2人/文部科学省「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(地域魅力化型)」指定校生徒のキラキラした様子をもう一度見たい生徒がファシリテーターになり企画、運営全校生徒数72人の高校が、全国の小規模校に働きかけて開催した「全国小規模校サミット」は、隣県の高校との交流行事がきっかけで昨年度、第1回が開催されました。生徒が見せた交流への意欲をキャッチして、生徒たち自身が大きなイベントを運営できるようになっていく過程には、教師たちの学びと成長もありました。生徒と教員と地域の信頼関係が互いを成長させた全国小規模校サミット取材・文/江森真矢子小国高校(山形・県立)第21回■ 第2回全国小規模校サミット概要■ 第2回全国小規模校サミットの日程・プログラム【趣旨】全国の小規模高校の生徒が交流し親睦を深めると共に、各校・地域が抱える課題について意見交換し、将来それぞれの地域で活躍する資質や能力、協働意識を育成する。 【大会主題】「今ここで起こっていることは、将来日本中で起こり得ること、小規模校だからこそできることがきっとある」~仲間と一緒に未来を考えよう~【主催】全国高等学校小規模校サミット実行委員会【共催】小国高校を支援する会【後援】小国町/小国町教育委員会/小国高同窓会/小国高後援会/小国高PTA/山形県教育委員会【指導協力】東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科【参加校】[岩手]伊保内高校/岩泉高校/住田高校/花泉高校/宮古北高校/[山形]荒砥高校/小国高校/新庄南高校金山校/[宮城]志津川高校/松山高校/[福島]川口高校/新地高校/[新潟]正徳館高校/[三重]飯南高校/[愛媛]三崎高校/[高知]大方高校/[長崎]平戸高校/ [熊本]天草高校倉岳校(10県18校)参加者総計168人うち高校生131人※平成30年度学校基本調査1日目18:1520:152日目9:009:309:5011:3013:0014:1016:3017:0017:45受付プレセッション参加者交流会セッション1参加校取り組み紹介セッション2講演セッション3 生徒交流ワークショップ受付開会式昼食閉会式502019 OCT. Vol.429

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