キャリアガイダンスVol.429
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第1回サミット開催に。「こうしたい!」という意志があふれるように。そのためには、大人の押し付けではないこと、楽しいことが大事。だから極力、生徒の力を生かして場をつくろう。この前例のないプランの実現を管理職が強力に後押しした。 その前年、コミュニティスクール化に向けて地域住民と熟議を行うため、教員団がファシリテーションを学んでいたことも影響した。多様な主体が共にビジョンを描く場をつくり、ワークショップの面白さを体験していたのだ。これを生徒が自分たちでつくれるようにしたい、と起案の通った年度末に岡崎エミ教授を訪ね、助力を乞うたところ、同学科卒業生の小野寺真希さんが研修から本番まで、生徒に伴走してくれることになった。 最初から全生徒に呼びかけるのではなく、興味をもちそうな少人数に呼びかけて1回目のファシリテーション研修を実施してもらい、次はそのメンバーが声を掛けて集まった30人への研修。最後は本番のリハーサルも兼ね、30人がファシリテーターとなって全校生徒でワークショップ。最初に集まった7人がコアメンバーとなり準備を進めた第1回は、19団体からの参加者を迎えて開催された。 板垣先生にとって収穫のひとつは、食事の準備や会場の手配など、立場は違っても生徒の成長という目的を共有し、一緒に走りながら考えてくれる地域の人たちとの出会いだ。もうひとつは、教員の成長。学校外の人を頼り巻き込む力、焦らず生徒を追い越さないという伴走力、学校も地域も生徒も本当に凄い!という実感を伴った誇り、まずはやってみようという前向き思考が生まれた。 第2回の実施を決めた今年度、新旧コアメンバーが第1回実施以降の変化を振り返った。挙がったのは「やればできる」「挑戦って大事」「積極的になった」「コミュ力UP」といった自身の成長実感。そして、仲間たちを見ると「ポジティブな人が増えた」「明るくなった」「仲良くなった」。さらに学校全体では「生徒の主体性が大事にされるようになった」「生徒の提案で決めることが増えた」。保健室利用が激減し、除雪ボランティアなど校外活動への自主的な参加が増えたなど、目に見える変化もある。 第1回のコアメンバーとして活躍した3年生の永井珠莉さんは、生徒と教員の関係が大きく変わったと言う。「私たちの話を聞いてくれて、自分はこう思う、っていうことをお互い対等に話せるようになりました。それは、私たちもだけど先生が変わったからだと思います。ワークショップ型の授業が増えたり、先生たちが勉強してて、学校外でもいろんな活動をしていることを聞くと、先生に負けてられないな、って思います」。 教員と生徒と地域の間に信頼関係が芽生え、地域の目も変わった。「無くなる学校、みたいに思われてる感じだったのが、最近はがんばってる学校、って思ってもらえてる」と永井さん。大人からの信頼は生徒の挑戦を後押しする。行事の成功で自信をつけ、それが地域や教師の支えによるものと感じた生徒たちは今、次のサミットに向けて動き始めている。生徒の実感する自身の変化、学校の変化■ 第2回開催までの軌跡2017年12月岩手県立花泉高校との交流サミット開催決定。東北芸術工科大学岡崎エミ教授に協力を仰ぐ2018年3月ファシリテーション研修①(コアメンバー7人がワークショップを体験)2018年5月ファシリテーション研修②(コアメンバーが集めた有志30人に対して)2018年6月ファシリテーション研修③(全校生徒に対し本番リハーサルを兼ね研修実施)2018年7月高校生ボランティアアワード、SCHネットワークシンポジウム等で実践発表2018年8月以降2018年8月ミーティング6回(荒砥高校からもスタッフ参加決定/第2回の目標やテーマ決め/東北芸術工科大学岡崎教授による指導)2019年5月ミーティング11回(参加校募集開始、手紙(245校宛)メール(260校宛)送信/東北芸術工科大学で30人がファシリテーター養成講座受講)2019年6月ミーティング、スキルアップのための自主練習(リハーサル/全体ミーティング/各セッション準備、動画、おもてなしなど20の小プロジェクトを推進)2019年7月第2回サミット開催2019年7月サミットを終えた小国高校生たち。赤いTシャツを着ているのがコアメンバー、前列一番右が板垣先生、前列一番左が小松先生、中央看板右が岡崎教授、左が小野寺さん512019 OCT. Vol.429

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