キャリアガイダンスVol.429
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通して、気仙沼で生きていくことを決めたNPO職員です。 「初め、えいごくんは大人しい中学生でした。でも、創作意欲が光っていた。変わっていく予感がありました」 成宮さんは、高校生になったえいごくんを気仙沼のマイプロジェクトアワードに誘い出します。大人になるのを待つよりも、高校生の今からでも気仙沼で行動してみないか、と。 対話を重ねるなかで、えいごくんは自分のCANに気づきます。自分にとっての当たり前は創作活動であり、それこそプロジェクトの種。気負わずに好きなことを形にしようと、気仙沼クエストの着想が生まれました。放課後は制服も脱がないまま気仙沼の町でゲームの企画を進め、そして家に帰ると夜中までプログラミングを自学し、さらにBGMまで作曲。 「気仙沼クエストの魅力はマップです。自分はCGを駆使したゲームよりもスーパーファミコンが大好き。ドット画だからこそマップへの思い入れが生まれます。これがドラクエの手法で再現した気仙沼のコミュニティです」 先日、地元のお祭で気仙沼クエストに自分のキャラクターを登場させようという参加した。 その後あーやは高校2年生の夏に映像の技術を磨くため短期留学し、今年から慶應義塾大学SFCに進みました。そして新たなるWILLと出会うための日々を過ごしています。 CANから始まったマイプロジェクトと言えば、昨年大会で大きな注目を集めたのは「気仙沼クエスト」です。気仙沼の町をドット絵で再現したゲームで、プレイヤーはご当地キャラになりきって町を歩きます。ネットで公開されてからは6000回以上プレイされています。 開発者は現在高校2年生のえいごくん。高校では美術部に所属し、絵を描いたり、作曲したり、ゲームを考えたり、創作活動に没頭して時間を忘れてしまう。それが彼の日常。実は小学2年生のとき、えいごくんの自宅は津波で全壊しています。 「震災はつらかった。でも、もう乗り越えました」 彼を支えたのは大人への憧れでした。地元の大人たちは立ち上がり、外からはたくさんのボランティアが来訪。絆を深め一致団結する姿を見て、自分も将来このコミュニティに加わりたいと思うようになりました。 その輪に加わるきっかけをくれたのは成宮さん。東日本大震災の復興活動を型企画を呼びかけたら、50人が登録したそうです。ゲームを通してコミュニティの魅力を体感してほしいという彼の願いに、気仙沼の人たちはどんどん引き込まれつつあります。 一方、えいごくんのように自力で制作・開発を進められる高校生ばかりではありません。高校生のCanを広げる場として、クリエイティブ教育は有効です。例えば、前述したあーやが参加していたのはライフイズテック社のプログラムでした。開発という難題に向き合うハードルを下げるため、教材・大学生メンター・演出など中高生が熱中する仕掛けを準備する教育団体です。そのノウハウは出張授業としても活用されており、広尾学園など首都圏の私立高校にも導入されています。 探究的な学びにおいて「あなたは何をやりたいの?」とWILLを問いかけることは重要ですが、時にはCANを広げるため、まずやってみる経験へと導くことも重要です。趣味を突き詰めたり、技術を身に付けたり、CANが次第に大きくなれば新しいWILLやNEEDに出会う確率が増します。 その意味で、ライフイズテック社が経産省「未来の教室」実証事業として、福岡県で開催した「Creative Hack for Local」は示唆深いものがあります。中高生がゼロからIT技術を学び、地域課題を解決するクリエイターになるプログラムです。一カ月半で実際に開発をやりとげるプロセスは、大きな成功体験になったことでしょう。 WILLを起点にした対話、CANを広げるクリエイティブ教育、正解はありません。主体的な学びへと高校生を導くためには、アプローチを個別化し、柔軟に組み合わせることが重要です。高校生が地域や身の回りの課題や気になることをテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行することを通じて学ぶ探究型学習プログラムです。マイプロジェクトでは、プロジェクトのテーマ設定に対する「主体性」と、たとえ小さくても実際に「アクションを起こす」ことを大切にしています。https://myprojects.jp/気仙沼を歩くゲームの開発CANを広げるクリエイティブ教育の可能性気仙沼クエストの画面気仙沼の海と認定NPO法人底上げ(中央が成宮さん)532019 OCT. Vol.429

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