キャリアガイダンスVol.430
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整備が絶対に必要であり、それが今の私の仕事です。「学校の働き方改革」についても総力戦で挑んでいます。ただし働き方改革のゴールは、先生方を今よりも楽にすることではありません。そうではなく、教師でなければできない仕事に真正面から向き合ってもらえる時間と環境を確保すること。教師でなければできない仕事、それは間違いなく授業です。先生方が、それぞれの教科で自分の教えていることの意義を伝え、子どもたちは、その学びが自分にとってどういう意味をもつかを考える。それこそがこれからの授業に求められることであり、学習指導要領を土俵に、ぜひそんな学びを創造していただきたいと願っています。味で先生方は、未来社会が立ち上がる瞬間に日々立ち合っているともいえます。 私の高校時代、「歴史とは過去を対象にした社会学であり、人間洞察の学問だ」と語り、政治史、経済史、文化史などを関連づけて構造的に説く授業をしてくれた日本史の先生がいました。そのまなざしは目の前の入試を越え、確実に未来を向いていました。今、官僚として選択を迫られたとき、歴史をひも解きながら考えられるのもこの学びのお陰。歴史的事象の見方・考え方を、私の軸、一生の財産として刻み込んでくれたのです。 かつて受験競争が厳しい時代においても、「俺は人間を育てているんだ」と多くの先生がおっしゃっていました。今はそれが本気で求められている時代。まさに先生方の出番です。 もちろん学習指導要領で掲げた理想がすぐに全国の教室で実現できるかというとそんな簡単ではなく、教職員定数の充実をはじめとした条件社会と共有してほしいと思います。改訂のポイント④として示した「社会に開かれた教育課程」とは、地域社会と協力しましょうというフワッとした話ではありません。地域に対して「本校はこういう特色があり、こういう生徒を育てるのだ」と断固とした意志とビジョンを示し、理解を促し、協力も仰ぐ。そうした意味を込めました。 学習指導要領とは、いわば共通性と多様性の蝶ちょうつがい番。誰もが一定水準の教育を受けられるのは、この国にとって最大のインフラであり、その質を担保するのが学習指導要領です。同時に、それぞれの学校において特色ある教育を組み立てるときの土俵でもあるわけです。しかしながら、共通性ばかり重視してしまうと、粛々と教科書をこなせばいいという発想に陥り、窮屈になりかねません。我が国の教科教育は、そんな底の浅いものではないはず。未来社会を切り拓く子どもたちの資質・能力を育むための素材として、学習指導要領を使いこなしていただければありがたいです。 教育とは、子どもたちへの働きかけによって、子どもたち自身が未来社会をつくる手助けをする営み。その意教職は日々の授業と未来社会を架橋する創造的な仕事教職は他にはない創造的な仕事。今、取り組まれている授業は確実に20年・30年後につながっていく
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