キャリアガイダンスVol.430
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考えています」 同校の生徒たちは学力や学習意欲が高い。一方で、知っていることや自分ができる範囲内に留まってしまうことが課題だと二田先生は感じている。 「殻を破って、新しいことに踏み出す力が足りていないので、授業設計で一歩踏み出す力を付ける仕掛けも考えています」ることを期待されています。そうした人材にとっては、『そもそも〝人〞とは何か、〝社会〞とは何か』を問うことが、社会貢献やいい仕事をする基盤になると 二田先生が「殻を破る力」を付けるために国語の授業で取り入れているひとつは、文章を「探究していく」ことだ。教材の要旨を理解するだけでなく、小説であれば「その場面はなぜあるのか」という、作者がその場面を設定することで何を語ろうとしているかの「そもそも」を問うメタプロットへのアプローチだ。 さらに、授業の中で「生徒自身の経験」を振り返る時間を設け、「どうして自分はそのようなことをしてきたのか?」と自分の行動を考える課題も設けている。自分の活動の背景を自身で考え意味づけしてから、教材に再び触れたときに、教材が語ろうとしている「そもそも」と、自分の行動の「そもそも」が結びついていく。 「自分の在り方を問い直すことで、殻 二田貴広先生は教員になった当初から、生徒が何かを「できるようになる」方法を学べる授業を意識してきた。例えば短歌の授業であれば鑑賞に留まらず、短歌を作れるようになる授業。小説であれば登場人物の心情理解ができるようになる授業などだ。それらができるようになれば、生徒たちは楽しんで次の短歌を作ってみたくなったり、新しい小説を読んでみようという学びの意欲につながるからだ。 現在勤務する奈良女子大学附属中等教育学校の生徒たちに対しては、「目の前のテキストや人、出来事にはすべて背景やスキーム(枠組み)があることを理解し、そのスキームを相対化できる力」を身に付けてほしいと語る。 「本校の生徒たちは、将来、社会を変革したり貢献するリーダー的存在にな国語理念から創る授業教員歴21年目。秋田県出身。新潟大学大学院現代社会文化研究科修了。秋田の公立高校で教員キャリアをスタートさせ、2004年から現職。国語科としてメディア・リテラシー教育にも力を入れているほか、本年度は進路指導部主任も務める。新しい考えをつくり、学び方を学ぶ授業人や社会の〝そもそも〞を問うことで、自身をアップデートし続ける人材になってほしい読解・思考に留まらず、探究して新しい考えを生み出す授業デザインへの落とし込み殻を破って、新しいこと・わからないことに踏み出す力を付ける生徒の課題・育成したい力取材・文/長島佳子 撮影/江口 薫二ふただ田貴広先生奈良女子大学附属中等教育学校(奈良・国立)122019 DEC. Vol.430
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