キャリアガイダンスVol.430
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●単元の流れ (全2時間 65分×2コマ)とが多いのではないだろうか。 「メタ認知力を身につけてほしいので、生徒と触れあう時間が長い目の前の教員のスキームをまずは捉えてみよう、と生徒に伝えています」 教員が生徒にとってどんなスキームをもった人間で、生徒たちに何を学んでほしいと思っているのか、今日の授業や先生の存在の「そもそも」も考える訓練をしているのだ。 「これをやっていると、キャリア教育などで外部の講師を招いたときにも『この人のねらいはなんだろう』と徹底的に考えられるようになります。講師に限らず、人とコミュニケーションする際に、相手の背景を考えて人間関係を築くようになっていきます」 アイスブレイクを踏んだ後に教材に戻り、3つの教材の論点の結びつけを行うことで、生徒たちは教材を通して自分の在り方も考え始める。情報同士の隠された関係性や、自分で新しい関係性に気づくことで、新しい考えを創っていくことにつながるという。 考えた内容は教育用SNS上に記述回答するが、自分の言葉で言語化することで論理力と表現力が鍛えられる。さらに全員で共有し、他者の意見を知ることで多様な論点に気づき、自分の考えも相対化できる。 驚かされたのは、授業の最後に「この授業の二田のねらいは?」という問いを出したことだ。一般的に授業のねらいは、授業の冒頭に教員側から示されるこを破っていく方向に進むのではないかという仮説のもとで授業を組み立てています」 例えば、取材当日の二田先生の授業が上記の単元だ。この日は3年生の現代文の読解で、3つの教材の論点の「点をつなぐ」思考を育成することをテーマとしている。 1時間目では3つの教材を読み、それぞれの論点をまとめる。2時間目はアイスブレイクから始まり、教材とは一見関係のない、生徒たちの行事での体験についてのグループトークを入れている。そのときに、学び方のコツがまとめられた「ラーニング・パターン」というカードを使い、自分たちの行事からの学びを意味づけして言語化していく。【授業実践のポイント】【単元を通したデザイン】1時間目2時間目現代文 (3学年)学び方を学ぶ ~論理の読解から「点をつなぐ」システム思考へ~科目・単元名教科書教材「原始社会像の真実」に加え、サブ教材「アマゾン、俺たちのもの」(新聞記事)、「変わる高校国語、なくなる文学-内田樹、小川洋子、茂木健一郎に訊く」(文芸誌記事)教材文章の論点を明確にしながら要旨を把握し、多面的・多角的な視点から評価する能力の向上。自分自身の価値観や思考をメタ認知する力の向上。文章の内容や解釈を多様な論点や異なる価値観と結びつけて、新たな観点から自分の考えを深め新しい考えを生み出す創造的に考える力の向上。単元の目標取材時の授業は上記の単元の2時間目にあたる。著者や論者の価値観が表れる3つの教材の論点を結びつけるとともに、生徒たちが自分たちの体験を意味づけする作業を取り入れ、「なぜ自分はそのようなことをしてきたのか?」を問い直すことで、教材の読み方が多角的になる経験を促している。要約3つの教材を読み、それぞれについて内容を各自簡略に要約する論点を導く要約をもとに、それぞれの文章の論点を導き出す。筆者の主張を理解するだけでなく、そこから読み取れる価値判断とは何かを考えるグループトーク各自が印象に残っている学校行事についてグループで共有し、ラーニングパターン・ランゲージ※のカードを用いて、行事から自分自身が得られた学びについて言語化単元の狙いを生徒自身が考える本単元が、二田先生のどのような意図によってデザインされたものかを考えてednityに記述、共有1時間目の要旨をまとめた映像を見て、問いについて考える3つの教材の論点を、どのように結びつけることができるかを考え、タブレットを用いて教育用SNSのednityに記述、共有※慶應義塾大学・井庭 崇教授が考案したツール教材から離れて、今までの学校行事でのポジティブな体験についてグループで語り合い、ラーニング・パターンが書かれたカードからその体験について意味づけをする。●自分自身の経験を意味づけし、 言語化する訓練を同時並行「1時間目でまとめた3つの教材の論点を結びつけると、どんなことが述べられるか?」という問いについて考え、回答をタブレットで全員が共有できる教育用SNS上に記入。●複数教材の論点を結びつけ、全員で共有2時間の授業を通してどんな資質・能力を育みたいと二田先生は考えているか、授業のねらいそのものを生徒に考えさせ、その回答もSNSで共有する。●単元のねらいを、生徒自身に考えてもらう「生徒にこうなってほしい」から創る 明日の授業実践事例レポート132019 DEC. Vol.430

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