キャリアガイダンスVol.430
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て考えてくる」 取材時にも、アイスブレイクで使ったラーニング・パターンについてもっと知りたいと、授業後に二田先生に質問に来る生徒たちもいた。 生徒たちの成長の姿は、二田先生からの問いへの生徒たちの回答や、「4月から自分自身がどう変化したか?」についての回答がありありと物語っている(右図)。自身を客観視し、授業での学びを今後どう役立てたいかについてまで、論理的に述べられている。 「私もグループ内で発言することが苦手なんです。そういうプレッシャーを生徒にはなるべく与えたくない。だからグループで会話するときの順序を予め決めたり、SNSに回答を書き込むことで、みんなの前で発表しなくても意見を全員に共有できる場をつくったりしています。他の生徒たちも大人しい生徒の意見を知ることができて嬉しいと言っています」 相手のスキームを捉えてメタ認知する授業も、もともと自身が苦手だったから始めたことだという。 「なんでも鵜呑みにしてすぐ騙される。でも、考えることを面倒がっていただけだったと思います」 自身のさまざまな経験を積み上げて授業デザインに生かしている二田先生に、今後、未来を生きていく生徒たちにどんな力をつけ、どんな授業をしていきたいか聞いてみた。 「新しいことは特にありませんが、知識やスキルを身に付けて自分をアップデートしていくと見える世界が変わり、自分で世界を表現したり創造できるようになります。テキストの理解や消費だけではなくクリエイトする側に生徒を育てるのがこれからの国語の授業だと考えています」 教材に書かれたこと、自分自身の活動、目の前の先生など、自らと関わるあらゆる事象についての背景や「そもそも」を考える授業を受けてきた生徒は、どんな変容を遂げているのだろう。 「『覚えて答えればいい』とか、『ここまででいいよね』という、生徒が減りました。私のテストはすべて記述式で問題も公開しているのですが、事前に『ちょっと見てください』と書いてくる生徒もいます。それで『説明が足りないよね』などとアドバイスするとさらにがんばっ 単元ごとの授業デザインの工夫とともに二田先生が常に心がけているのが、「面白い」から入ることだ。 「私自身が大学時代に、自分でわかって気づくというアハ体験がすごく面白かった。だから生徒にもその感覚を体感させてあげたいと思っています。面白くなければ学ぶ意味がないですし、学びが続かないですから」 生徒にアハ体験をさせるために、例えば小さなことでも「できた!」と感じさせる成功体験を積ませることもある。また、読解の際に初読した後、文章の背景にある歴史や文化などの知識を入れることで、次に読んだときのテキストの印象がガラッと変わって見える体験をさせるなどだ。 「基本は自分自身が授業や教材、世の中を面白がっている姿勢を見せることです。自分だけでは限界があるので、私が面白いと思う社会の人と関わって彼らを講師として連れてきたりします。すると生徒たちは『この先生は社会のおもろい知人がいっぱいいる人なんだな』と、私の話に耳を傾けてくれるようになります」 大人しい生徒でもグループワークに参加しやすくしたり、発言しやすい環境づくりも意識している。●学びと学びをつなげ、高次な学びに自らレベルアップする積極性が身につく。このように、自身のさまざまな活動を活動だけで終わらせてしまうのではなく、机上の学びや人との関わり合い、日頃感じていることから学んだことにつなげることは、多様な能力をもつ人間になることにつながると思う。●単なる二項対立に留まらず、両者を使用して新たなる価値観を創り出す能力を伸ばそうとしたと考える。それはこれからの時代に求められる能力であり、それを育もうとしたこの授業は傾聴に値する。この授業の実用性については未来においてしか評価できないと思う。●隠れた関係性を見つけることは、今までの価値観や意見をより良く変える可能性があり、そのことは考え方を深めると感じた。仮に、人とのコミュニケーションがうまくいかない、対立してしまうことが多い、といった状況に陥ったときには、この授業のことを思い出すと何かしらのヒントを得られると思った。「今日の授業のねらいは何か? その評価は?」●現代文にかかわらず二項対立の考え方がいかに大切なのかということや、教科の壁を超えて知識と知識が繋がるということを体感し、確実に自分の今までの考え方や物の捉え方が進化したと思う。少しは人間力が上がったと思う。●4月の私は、何かと善悪を付けたがっていた。当然自身についても善悪を付けていた。しかし現代文の勉強において1つの価値観にとらわれず、複雑さに耐えうる能力が育まれたことから、今の自分の環境だけを絶対視せず、ありのままを見られる努力ができるようになった。●相手の意見や主張に対して、疑問をもったときには積極的に聞いてみよう、という考えが生まれた。他者との話し合いにおいて、相手の意見を完全に否定することは何の利益も生まないが、相手の意見について何も干渉しないことも同様に、自分の中で不満が溜まったり、偏った価値観に基づいたものができてしまうので、より良い生き方、社会、学校…などにしていくために、お互いを信頼したうえで議論をし、切磋琢磨していくべきだと感じた。「4月から自分自身がどう変化したか?」自分をメタ認知し、自らハードルを上げる生徒が増えた生徒の変容・成長自分が面白いと思った感覚を生徒にも感じてもらいたい授業デザインの理念生徒の声142019 DEC. Vol.430

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