キャリアガイダンスVol.430
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●単元の流れ(全5時間 50分×5コマ) 取材時は、単元の間に差し挟まれたActivity(活動を通しての学習)を授業で行っていた。教科書の元々のお題は「自分の宝物を発表する」。そこに工藤先生は「ALTのAriel先生がよくわかるように」と一言加え、漠然と発表せずに実在する相手に伝える、というゴールを設定した。 仕上げの発表の授業では、ある生徒が「無理! 中学の時、みんなの前で何も言えずに泣いちゃったんだよ」と訴えた。でも先生に励まされ壇上に立つと、紹介する宝物を持つ手はぶるぶる震えていたが、仲間と一緒に磨いてきたスピーチを笑顔でやりきった。その生徒だけでなく、全員、堂々たるスピーチだった。ているのだ。 授業ではスピーチやプレゼンにも挑戦するが、その際は「失敗で終わり挽回もできず、余計に自信を失う」ことがないよう、人前で話しては仲間と振り返ることをくり返すことで、自分の成長を実感しやすい立て付けにしている(上の図や写真も参照)。 「生徒一人ひとりが『あなたがいてくれて良かった』と相手から思われ、自分も相手にそう思い、学び合うなかでお互いの成長を実感する。そんな経験を積み上げてほしいんです。『一緒にやろう。できることはあるし、できることをしよう。学び合うにはあなたもまわりのみんなも必要なんだよ』ということが、授業を通して一番伝えたいことですね」をゴールに置いたら、この単元で他に学ぶ文法があっても、そこは軽めにしたり別の単元にくっつけたりして、定めたゴールに向かって生徒ががんばれば登れる小さな階段を作るイメージで、毎授業の内容を考えるんです。そうしたやり方をバックワードデザイン(逆向き設計)というのだと昨年研修で教わり、より迷いがなくなりました」 ゴールに向かう階段を登るときは、「生徒同士をつなげる」ことも意図的に行う。英語を読む・書く・聴く・話すのどの活動でも、友人以外ともペアやグループを組む機会をつくり、「学び愛カード」と名づけた用紙を使って、お互いの良さや気づきをフィードバックしながら、全員で学び合うことを大事にし【単元を通したデザイン】1時間目2時間目3・4時間目5時間目コミュニケーション英語Activity 2 My Treasure科目・単元名教科書 (Revised COMET EnglishCommunication I)教材自分の宝物を(ALTの)Ariel先生がよくわかるように紹介しよう単元の目標なりきりスピーチ教科書の例文「私の宝物」をその人になりきって話す練習。Criteria(下図)でセルフチェックもペアで学び合い3時間目は生徒同士ペアでおのおのの英作文をチェックし、次いでスピーチ練習1回目の発表生徒を2グループに分けて、1つ目のグループでまず発表、フィードバックをもらう数人で学び合い4時間目は数人でスピーチ→仲間のフィードバック→振り返りをくり返す2回目の発表2つ目のグループで、動画の撮影があるなかで再度チャレンジ日本語作文・英作文教科書の構文を基に「私の宝物」をまず日本語で考え、音声翻訳アプリVoiceTra(※)も使い英作文※VoiceTraは、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)の技術を活用したアプリ。話しかけた日本語を英語に訳し、その翻訳文を再度日本語訳にするので、意図した翻訳になっているか確認できる工藤先生が他の先生の例からも学び自作したCriteria(評価基準)。スピーチのScript(台本)とExpression(表現)について、評価基準と、評価されるために「具体的にすること」が示されている。生徒がセルフチェックや級友へのフィードバックに活用※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.430)【授業実践のポイント】ALTのAriel先生にスピーチする、というゴールに向けて、生徒同士が「お互いの良い点を伝え合う」「失敗してもまた挑戦できる」環境の中で学び合う。個人練習+グループ発表で1時間で5回スピーチを反復(写真上)。仲間からのフィードバックと自分の振り返りで、できたことを確認し、次はどう改善するかも考える(写真下)教室を前後に分け、「みんなの前での発表」もぶっつけ本番のみにせず、1回目の発表→フィードバック後、2回目の挑戦ができる形に。緊張する生徒を先生は笑顔で応援。●仲間から賞賛や指摘をもらいながら 「自分の発表を自分で良くする」(4時間目)●「失敗したら終わり」ではなく もう一度チャレンジできる環境に(5時間目)162019 DEC. Vol.430
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