キャリアガイダンスVol.430
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●単元の流れ (全13時間 50分×13コマ)に、速度には「平均的な速度」と「瞬間的な速度」があることを生徒と対話をしながら導き出し、これから学ぶ微分を使えば後者を計算で出すことができると伝えた。さらに授業の後半では、一定の速度で移動する点と加速度的に移動する点について、表とグラフを使って考察。途中、「そもそも点の情報だけでグラフの線を描いてしまっていいのか(グラフは実線でいいのか)」という問いが吉田先生から投げかけられ、指名された生徒が考え込むというシーンが見られた。「これは、数学の本質です。実は尋ねるつもりはなかったのですが、ふと、みんな理解しているのかなと思って、聞いてみました」と生徒に語りかける吉田先生。こうして立ち止まり、当たり前と思っていることについて生徒と共に考えることもしばしばある。これが、「原因(Why)を追究して納得できるまで考え抜く姿勢」につながるのだ。 導入を経て、教科書に載っている公式や定理が登場するのは、「3回目(の授業)くらい」だという。「その定理や公式が生まれるまでにどういう経緯があったかという背景やどう役立っているかという事例を知らず、最初から公式を覚えて機械的に解いていたのでは、ありがたみも面白みもない。どういうことだろうと考えたり悩んだりせずにただ覚えても、その知識には広がりがない。逆に、本質をしっかりと理解した生徒は、あとで強い」と、吉田先生は力強く語る。ネチやる」という。 例えば、取材当日の授業は、数学Ⅱ「微分」の1回目だった。この日取り上げたのは、生徒たちが先日行った修学旅行で乗った新幹線のぞみ号と、一般的な車のスピードメーター。これらを例 「目の前の現象や結果に対して疑問を抱かせる」ために、吉田先生が各単元の「命」と位置付けるのが、導入にあたる1回目の授業だ。どの単元でも生徒にとって身近なネタから話を始め、「5分で済むことを1時間かけてネチ【授業実践のポイント】【単元を通したデザイン】1時間目2時間目3時間目以降数学Ⅱ「微分法」科目・単元名教科書、プリント、『サクシード数学Ⅱ+B』(数研出版)、『チャート式 基礎からの数学Ⅱ+B』(数研出版)教材平均の速さと瞬間の速さの関係を理解させ、微分係数の図形的な意味について理解させる。導関数の定義を与え、具体的に導関数を求める中で、その計算法則について理解させる。関数の増減と導関数の関係について理解させ、関数のグラフが描けるようにする。高次方程式の実数解の個数や、多項式の大小関係を関数の増減を調べることによって判断できるようにする単元の目標身近な事例や問いかけで疑問を抱かせ、理解できるまで考え抜く姿勢を養う授業デザインへの落とし込み取材時の授業は数学Ⅱ「微分」の1時間目(2年生・理系クラス)。教科書は使用せず、吉田先生自作のプリントを使って進められる。吉田先生が黒板の前に立ち、生徒を指名して「なんで?」「どう思う?」と問いかける対話的なスタイル。「数学の場合、生徒同士の教え合いは解法の教え合いになりがちなので、表層的なアクティブラーニング的な学習は取り入れない」のが吉田先生流。導入平均の速さと瞬間の速さ、運動する点についての考察①導入・考察運動する点についての考察②、平均変化率と接線の傾き、微分係数考察・問題演習公式導出・関数の増減・グラフ描画、問題演習「瞬間」とは何か、どれくらいの間のことなのか、数学的にどう表せるのか、生徒に問いを投げかけながら深めていく。一定の速度で移動する点Pと加速度的に移動する点Qについて、表とグラフを使って理解を深める。「これから微分を学んでいくにあたり、今日の内容を理解せずにただ計算していてもまったく意味がない」と生徒に檄を飛ばす。●身近な事例から「速度」や「瞬間」について対話的に掘り下げる●身近な事例を数学的理解へと発展させる「生徒にこうなってほしい」から創る 明日の授業実践事例レポート192019 DEC. Vol.430
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