キャリアガイダンスVol.430
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られるようになり、その変化を、ノートの軌跡を通して生徒自身も実感する。 運動面だけではない。「自分で考えて行動できるようになった」「協力し合えた」「あきらめないようになった」などと人間的な成長も感じていく。 樫﨑先生が手ごたえを感じるのは、「生徒が考えることを楽しむようになら工夫の跡が読み取れず、運動量も実力からして負荷が足りなければ、2になることもあります」くわからないんだ。みんなで考えてみよう」と投げかけ、生徒一人ひとりに自分なりの体育の目標と評価基準を考えてもらったのだ。「友達の人柄を再認識する」など、想像もしていなかった目標を立てる生徒もいて(左上の「生徒の声」も参照)、今では「体育の価値を生徒から教えてもらっている」という。具を作る人など、いろいろな人が集まった会で、そこで『体育とは何か』という話が出たんです。私も考えれば考えるほどわからなくなって。今の時代はインターネットで学習できますし、体を鍛えるだけなら個人でもできます。じゃあ、学校で体育をする意味はなんだろう。そのことを生徒も教員も考える必要があると思いました。例えば本校の運動会は、今年度から運動嫌いな子も楽しめる種目を生徒が考え、運動会を創る方向にシフトしました。同じように授業でも、体育を『する』だけでなく、未来の体育を『生徒と一緒に創る』ことができたらと思っているんです」 自己評価で「あきらめないようになった」と記した生徒は、樫﨑先生の体育にこんな思いも書き添えている。「人とちがう体育を共有しあえる場なんだと感じた」 最初はノートに一言、二言しか書けない生徒が多い。だが毎授業フィードバックを行っていくと、自分の考えが認められる嬉しさや安心感があるからか、生徒の記述はどんどん増えるという。すると自分の思いをより言語化できるようになり、工夫も浮かびやすくなる。結果、前よりも運動面で上達や向上が見「中学で体育の評価がずっと1や2だ った生徒が、4を取ることもあります。逆に運動能力は高い生徒でも、ノートかった」ときだ。当初は手と足の動きがばらばらでうまく走れなかった生徒が、仲間と生き生きと計画を立てているのを見ると、「自分で考えてやる活動って楽しいよね」と改めて思う。 今年度からは新たな挑戦も始めた。授業の目標は示すが、「体育を学校でやる意味って何だろうね。実は私もよ 樫﨑先生がこうした授業を目指すようになったのは、前任の特別支援学校での経験がきっかけだ。知的障害の生徒たちと接し、支援の仕方を学ぶうちに、「できない生徒」とは厳密には「できない環境にある」のだと気づいた。 「研修ではこんな話も出ました。『環境を整えれば、生徒のできることは増える。そのことを知らない教員に教わる生徒は不幸だ』と。頭をガーンと殴られた気がしました。自分が手立てを知っていれば成長を手助けできるかもしれない。勉強しなきゃと」 とはいえ生徒は十人十色で必要な手立てはみんな違う。見出したのが、生徒が自分に合ったやり方を自分で考え、教師はそれを支援するやり方だ。 「未来の体育を構想するプロジェクト」に昨年参加したのも転機になった。 「体育の先生や体育嫌いの人、体育器●苦手なメニューで困った時もメンバーで原因を考え克服を目指す意識をもてた。個人で行うより、協力、声を掛け合うほうが継続できると改めてわかった。●あきらめないようになった。指示待ちをやめるようになった。達成感→モチベーション。できないことをCheckして原因を自分で分析できるようになった。●効率的に体力を伸ばせた。話し合うことでやれるようになり、お互いの考えを尊重できるようになった。自分の問題と向き合い、その解決策について考え、実践もできた。忍耐力が身に付き、何事も諦めずに取り組めるようになった。●前よりも自分で考えて行動する力が身についたと思う。自分の意見も発言できるようになり、メンバーと協力しあえ、より体育をするのが楽しくなった。これからも意識していきたい! インターバルや腹筋、ダンベル等をがんばったおかげでスポーツテストが1年生のときよりも成績があがってうれしかった。●(体育で「友達がどんな人柄か再認識する」ことにも挑戦)普段は熱くならないのにスポーツをやると口数が増えたり、さまざまな表現を見ることができておもしろかった。自分で変化を起こしてみると普段は見えないことも見えるのだと思った。だから今後は物事に変化を加えてとらえてみようと思った。生徒の自己評価(できたことや今後に生きること)体育の振り返りのノート思いを言語化できるようになり運動の上達と人間的成長も自覚生徒の変容・成長できない生徒は「できない環境にある」その気づきが自分の授業観を変えた授業デザインの理念生徒の声毎時間つけるノート。フォーマットも自作してよいので生徒によって内容は違う。仲間から一言もらう欄も作るよう求め、生徒同士の支え合いも後押し。授業後にノートを受け取る樫﨑先生。生徒の記述に、自身からは「気づきがあると楽しいね」「私も勉強になった」と価値の重みづけをする一言や、「できる人はどうしている?」「コツは何かな?」と思考を促す一言を返している。「生徒にこうなってほしい」から創る 明日の授業実践事例レポート232019 DEC. Vol.430

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