キャリアガイダンスVol.430
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いと思っているかのように見えます」 林先生は社会科を通して多文化共生や他者を敬う気持ちを育み、学力と人間力を両輪として社会貢献できる人間になってほしいと考えている。人の役に立つ人材になるためには、生徒たちの自己肯定感を高め、他者に自ら働きかけ、自分の可能性を信じてチャレンジする主体性が必要だ。それを地理の授業の中でどう身につけていくか、日々実践しながらも常に考え続けているという。ちに「主体性」や「チャレンジ精神」をもってほしいと感じるようになった。 「素直でいい子たちばかりで、私から見ると潜在能力が高いのですが、現状の居心地の良さに満足して、自分にはもっと可能性があるという発想がない。しんどい思いをしてまで殻を破りたくな力』『考える力』『学び合う力』だと伝えています。生徒たちは当初は『学力』以外はピンと来ていないようですが、授業の中で小さな積み重ねを取り入れていきます」 生徒たちに伝えているねらいに加え、 林 仁大先生は地理教員として授業を行うなかで、「社会科は暗記科目」と捉えている生徒が多いことが気になっていた。 「確かに社会科は他教科に比べて思考するにも基礎的な知識が必要な教科ではあります。しかし前任校時代に、難関大学を志望する生徒が、知識はあるのに論述が書けないことを目の当たりにして、知識と知識、点と点をつなげることができていないと思い知らされました。探究学習などは教科横断と言っているのに、教科どころか単元ごとでしか頭に入っていないのではと」 論述するには、もっている知識をつなげて自分なりの意見を表現するという「知識の活用」が求められる。それが生徒たちには不足していると感じていた。 さらに津東高校に着任後は、生徒た 生徒たちにチャレンジ精神や主体的な学びを育むために、林先生は「とにかくいろいろな経験を積ませて自信をもたせてあげたい」と語る。 「私は4月の初めの授業ガイダンスで、地理の授業で養う力は『学力』『学ぶ地理教員歴26年目。三重県出身。名張高校、津高校を経て2015年より現職。これまで、産業社会と人間のカリキュラムづくりやSSHなど、キャリア教育の企画運営などを実践。キャリア教育、探究活動、授業を密接に関連付ける取組を行っている。林 仁大先生津東高校(三重・県立)生徒に問い続けることで知識を結びつけるようになる授業デザインへの落とし込み自分の可能性を信じて主体的に前に進む力をつける生徒の課題・育成したい力取材・文/長島佳子 撮影/山崎省吾理念から創る授業自身をメタ認知し、知識活用力を育てる授業学力と人間力の両輪をもって社会貢献できる人材になってほしい242019 DEC. Vol.430

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