キャリアガイダンスVol.430
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生徒が理解していきます」 さらに、熱帯や乾燥帯など、日本とは離れた地域の気候の場合、いくらメカニズムから学んでも生徒が自分事として興味をもって捉えることは難しい。そこでこの日は③の問いとして「熱帯や乾燥帯で、もし行くとしたらどこに行きたい?」について、まず旅行気分で語り合った。その後に「では、10年間住むとしたら?」と、その国の詳細情報や自分の志向がわからないと答えられない問いへと発展させていく。必要な情報をスマホや資料集を活用して調べて、なぜその場所なのか、自分なりの答えを導き出していく。グループ内で発表し、仲間の考えを聴くことで、自分や今住んでいる場所についても見つめ直すきっかけとなる。 「問いについては大きく分けて①地理の授業で習った復習の問い、②他教科・他科目や中学で習ったことからの問い、③答えが一つでない問いの、3つを意識しています。グループで考えて仲間の意見を聞くことで自己のメタ認知にもつながります」 取材当日はケッペンの気候区分の熱帯と乾燥帯についての授業だったが、①や②の問いでは、単元の前半で学んだ気候の概要や、理科的な知識が必要とされる問いが出されていた。 「ほかの単元では、例えば新田集落の学習なら江戸の幕政改革を振り返ったり、環境問題だったら保健の授業と重なるし、地形だったら中学の理科から引き出せたりと、教科はすべてつながっている、知識はつなげて使うものだとかな問いを織りまぜて、まず個人で考えてからグループで話し合う。自分の考えを他者との話し合いでメタ認知して、自分と他者を相対化する。 「生徒によってはクラスメートでも話したことがない相手もいます。授業のグループ活動で話すようになれば、学校行事などでも活きてきます」 また、問いは単語ではなく文章で答えるような内容を心掛けたり、答えに対して「なぜそう思った?」と繰り返し問いかけることで、理由や根拠を提示することも訓練している。 こうした問いを発し続け、仲間と共に考えていく授業を続けていくことで、生徒たちは地理を暗記科目ではなく、メカニズムや根拠から自分で考えを導きだす学びだと理解し始めるという。他教科・他科目との関連付けや、特別活動を含めた学校活動全体で活きてくる力も意識している。 例えば、林先生の授業はグループ学習が多い。講義型の説明の場合でも細【単元を通したデザイン】地理(2学年)世界の気候科目・単元名教科書、資料集、ワーク用副教材、地図帳教材気候の成りたちのメカニズムと世界の気候区分を知り、それぞれの特徴を把握することによって、その気候の景観や人々の生活などの様子について、現実的に思い浮かべることができるようにする。資料を分析する基礎力をつくる。単元の目標【授業実践のポイント】取材時の授業は上記の単元の5時間目にあたる。気候区分の概論を頭に入れたうえで、前回授業の熱帯との違いを意識しながら今回授業の乾燥帯気候の特徴について、メカニズムから考察。さらに異国の暮らしを自分事化する。ワーク用の副教材で復習する際に、今までの授業で学んだ知識をどう使えばよいか、気候のメカニズムを思い起こす発問を投げかける。●復習の発問で知識の定着を図る新しく学ぶ気候区分の特徴を把握するために、過去に学んだ知識や資料やグラフの読み解き方、他教科で学んだことなど、知識を関連付けて活用できるようにする。●他教科からの学びも含めて、気候について考える学んだ気候区分に属する具体的な国や地域についてさらに詳細な情報を収集し、「行きたい国、住みたい国」を考えることから、異国のくらしと自分の興味を関連付ける。●知識と知識の関連付けから、自分との関連付けへ●単元の流れ (全10時間 50分×10コマ)1~3時間目(気候の成り立ちの理解)4~10時間目(世界の気候区分の理解)前回授業の復習ワーク用の副教材を使って、前回の授業で学んだことの確認気候の概論について学ぶ気候に影響を与える要素について、気温や降水量、植生などのメカニズムから自分で考えられるように学ぶ学んだことの問いを考える同じ熱帯の中で景観の違いが生じる理由などをグループで考える前回授業の復習ワーク用の副教材を使って、前回の授業で学んだことの確認学んだ気候区分の地域を自分事化する学んだ気候区分の中で行きたい国、住みたい国についてスマホで調べて考え、理由などをグループで共有するこの日に新しく学ぶ気候区分について、気候の概論で学んだ知識をもとに考察特定の気候区分の特徴を、単元の前半の概論で学んだ知識や、他教科で学んだ知識を基に、自分たちで考えられるようグループワークで考察する「生徒にこうなってほしい」から創る 明日の授業実践事例レポート252019 DEC. Vol.430

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