キャリアガイダンスVol.430
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【単元を通したデザイン】●単元の流れ (全4時間 45分×4コマ)1~2時間目生物基礎「免疫のシステム」(「生物の体内環境」分野の小単元)科目・単元名教科書、プリント2種類(課題プリント、参考資料プリント)、iPad教材1.自然免疫と適応免疫のそれぞれの特徴がわかる。2.免疫系の異常による疾患や免疫の医療への応用例について説明することができる。3.免疫に関する理解を基にして、健康な生活や疾患に対する適切な対応について考察することができる単元の目標グループ学習大野先生自作のプリントを使用し、4~5名のグループで課題を考察する3時間目ミニプロジェクト学習プレゼンテーション各自が興味のあるテーマについてインターネットや文献などで調べてまとめ、プレゼンテーションを行うテーマ例:「ヘルパーT細胞、キラーT細胞になる要素は何か?」、「免疫力を向上させるには何をすれば良いのか?」、「狂犬病はなぜ発症したらほぼ死に至るの?」、「インフルエンザウィルスはどこから発生するのか?」など4時間目相互評価、振り返り単元を通しての自身の学びや活動を振り返り、クラスメイトのプレゼンを見ての感想や授業の進め方への意見なども含めて「振り返りシート」に記入する※メディカルサイエンステクノロジーコースの例(コースやクラスにより進度は異なる)【授業実践のポイント】授業はプリントをベースにしたグループ学習が中心。基礎課題については教科書などで調べながらまとめ、応用課題は仲間同士で考察する。生徒はiPadを使用し、講義スライドなどのデータは協働学習システムschool Taktで共有、質問のやりとりはsli.doで行うなど、ICTツールも適宜活用している。大野先生は教室を巡回しながら生徒の様子を観察し、時に声をかける。生徒からの質問に答えることもあるが、考える取っかかりを与えるという印象だ。●グループ学習で学び合い、考察し、 知識をアウトプットする機会をもつ大野先生は本物に触れることもとても大事にしている。この日は死んだハチと生きた蝶々を持参。「生物の体内環境」分野では、本物の腎臓にも触れた。●頭で理解する・考察するだけでなく、 本物に触れて心で感じることを大切にするミニプロジェクト学習ではあらかじめ発表に型を設けており、自ら立てた問いで始まり、さらなる学びにつながるよう、最後は再び問いで終わる構成になっている。●単元の最後のミニプロジェクト学習では、 自ら問いを立て、探究していくれば仲間に尋ね、わかったことは仲間に教えるという相互依存的な学び合いが起こるよう、生徒に積極的に声をかけて安心・安全な場作りを促している。 「知識の理解・習得で終わってしまうのではなく、自分で考察して知識の活用・探究まで深めることを目指しています。そして、その過程で、学び方を学んで自分に合った方法を見いだし、仲間に頼り頼られる相互依存の経験をし、生物のすごさ、学問の面白さを感じてもらうことを意図しています」 学問や探究の面白さを生徒に体感させ、自律した学習者に進化させるため、単元の最後には「ミニプロジェクト学習」を設定。生徒一人ひとりが自分の興味のあるテーマ(単元に関するもの)について問いを立てて探究し、わかったことやさらに知りたいこと、今後深めたいテくことで安心感を得て学習に入りやすくなる生徒もいる。AL型授業をすることに意味があるのではなく、生徒が自分の納得のいく方法で学習すること、自分に合った学び方を模索することに意味がある」と大野先生は考える。 自作のプリントを使ったグループ学習も、理念・方針に基づき組み立てている。単元ごとに設定した「目的」の下、基礎的内容の理解・習得、教科書には答えが載っていない課題の考察、実際の社会や生活につなげた課題の考察と、段階的に学びを深めていけるよう設計。まずは自分で考え、わからなけ 「教員の役割は、適切な場の設定・提供と、教科書の先にある深遠な世界を見せること」と考える大野先生。授業は教員が教える場ではなく生徒が自ら責任をもって自律的に学ぶ場であるという考えから、アクティブラーニング型授業(以下、AL型授業)を軸に据えて授業デザインを行なっている。 軸は揺るぎないが、「自律」「学び方を学ぶ」「責任の移行」といった理念・方針から、授業は生徒を巻き込みながらデザインしていく。先生による講義の有無からグループの分け方まで、生徒と話し合って決めるのだ。「講義を聴※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.430)主体的に学び合い考察する場を作り、教科書の先にある世界にも踏み込む授業デザインへの落とし込み282019 DEC. Vol.430

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