キャリアガイダンスVol.430
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授業でしかできないことをしているか評価は何のためなのか 生徒にどんな力を育むかという視点で授業を改善していくとき、学習評価と一体的に考えていくことが必要です。平成31年1月21日、新学習指導要領に対応した「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」が公表されました。これをとりまとめた中央教育審議会のワーキンググループにおいて、主査を務めた市川伸一先生に、学習評価から考える授業の在り方について伺いました。 なぜ〝授業〞というものがあるのでしょうか。知識を得るだけなら、書物やインターネットがあればできます。しかし、一人での学びの限界があるから、それを超えるために学校があり、授業があるはずです。生徒と教師が「時間」と「空間」を共有する授業でしかできない、有意義な学びができているか。そこに、授業改善の方向性があるように思います。 私は心理学の研究者ですが、これまで全国各地の小・中・高校の授業実践に関わってきました。30年前、地域の子どもたちに対して心理学を活用した「学習相談室」を始めたことがきっかけです。この実践から見えてきた子どもたちの学習の悩みから、学校の授業にも課題感をもち、教師が基本的なことを教えたうえで問題解決や討論を行う、「教えて考えさせる授業」という授業法を提案するようになりました。現在は年間50件以上の学校の教員研修や講習に参加させていただき、現場の先生方と一緒に授業づくりに取り組んでいます。 こうして多くの授業を見てきたなかで最ももどかしく思うのが、生徒に求める発言が「センテンス」ではなく「単語」である授業です。先生が説明したことについて「これを何と言います東京大学 名誉教授/帝京大学中学校・高校 校長補佐市川伸一いちかわ・しんいち●1977年東京大学文学部心理学専修課程卒業、文学博士。中央教育審議会教育課程部会委員、学習支援研究機構理事長。著書・編著書に『勉強法が変わる本―心理学からのアドバイス』(岩波ジュニア新書)、『授業からの学校改革-「教えて考えさせる授業」による主体的・対話的で深い習得』(図書文化社)など多数。取材・文/藤崎雅子 撮影/平山 諭単語で答えられる問いは社会には存在しない
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