キャリアガイダンスVol.430
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 若手はもちろん、ベテランにとっても若手の躓きのポイントがわかるなど、気づきの多い勉強会であるだけでなく、クラス経営など授業以外で若手が悩んでいることも共有でき、若手にとってベテランがメンターとして機能しています。一方で、中堅が抜けているという課題もありました。 そこで今年から、師範塾のほかに、実習助手も含めた全教職員を対象とした授業研究会も実施することとしました。全教員が16グループに分かれて、6月から1カ月間でお互いの授業を参観し合ったのです。グループには同じ教科が入らないよう配慮しました。すると、他教科の先生からは「生徒の視点で授業を見られた」とか「教科を超えた関連性に気づいた」などの意見が出たり、実習助手からは「保護者の視点で授業を見た」など、多様な視点で授業を評価し合うことができました。教科の枠を超えて大切にしなければいけない姿勢や、授業の雰囲気づくりを含め、教員として大事なものを学べる場ができたと感じています。 もちろん、うまくいっている授業ばかりではありません。そうした授業を見たときは、個別指導ではなく職員会議で「例えば、生徒が寝ていても平気で授業をしていたり、相変わらずチョーク&トークに終始した授業があるのでなるべく減らしてください」と全員に周知するようにしています。また、1学期の期末考査前には「暗記しただけで点数が取れるような問題ではなく、思考力・判断力・表現力を求められるような設問を入れてください」とお願いしました。 部長等からは、「そういうことを校長が言うと絶対になってしまうので、教務部長などに任せた方がいい」と苦言を呈されましたが、私の考えを周知し続けることも大事だと思っています。そのため、冒頭の始業式での式辞をはじめ、私の考えを「校長だより」として学校ホームページに週1回ペースで発信しており、本校の教員だけでなく保護者や他校の教員も読んでくれています。 また、福井県では毎年「学習状況調査」という、生徒が教員の授業の「わかる度」を評価するものがあります。生徒からの評価がパーセンテージで一目言をしたからには、なるべく時間をとって、先生たちの授業を見学するようにしています。気づいたことがある場合は、「今日の授業は何を目的としていましたか?」と、その先生が自身で振り返りができるような問いかけをするようにしています。 授業改善について、本校では2014年から「若手授業力向上塾」(以下、通称「師範塾」)を実施しています。本校は毎年のように、新任教員が入ってくるため、教員の3分の1が20代です。彼らの授業力を付けるために、教頭と各分掌部長、そして若手でつくった勉強会が師範塾です。グループに分かれて、まず師範であるベテランが授業実践します。お手本を見せるというより授業を開示して、いわば率先して恥をかいてもらい、授業を見合うことへのハードルを下げてもらっています。そして、放課後に振り返りの時間をもち意見交換したうえで、後日若手の授業を見学します。筋が伸びる思いがしました。 それからの私は自分の授業を一から見直し、1時間でどのような力をつけるのか、1分1秒も無駄にしてはいけないという思いで教材や組み立て、問いの投げかけなどを練り上げた授業をするよう心掛けるようになりました。 その生徒が投げかけてくれた「授業の完全理解」という言葉が私を変えてくれたように、本校の生徒や先生方も毎時間の授業を大事にしてほしいと願い、「先生方と一緒にいい授業をつくっていきたい」と宣言をしたのです。宣教科を超えた授業研究会で教員としての基本姿勢を学ぶ授業は、生徒と教員の間に信頼関係があって成り立つ「先生たちと一緒にいい授業をつくりたい」と着任最初の始業式で宣言「生徒にこうなってほしい」から創る 明日の授業一人ひとりの先生の授業が生徒、クラス、学校をつくっていく352019 DEC. Vol.430

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