キャリアガイダンスVol.430
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進路指導担当花尻健明先生 旭川東高校では、どんなことに対しても妥協することなくベストを尽くそうとする精神を表した「シマレ ガンバレ」を学校標語(昭和8年制定)として掲げており、進路指導のねらいも「シマレ ガンバレの醸成」に定めている。また、自分がイメージする自己像「想」と現実の自己像「実」を進路実現の両輪と位置付け、「想実一致」(なりたい自分を実現する)を目指すことを進路指導のテーマに据えている。さらに、自らの進路をデザインするために必要な力を「広げ、深める」のが1年次、それを「伸ばし、強める」のが2年次、「自らの進路デザインを形にする」のが3年次と学年ごとに目標を定め、生徒にどのような意識をもたせ、どのようなテーマで何をするか、どのような力を身に付けさせるのか、3年間の計画を作成している(図1)。この進路指導の軸となるのが、「旭東アカデメイア」、「学びのフローラ」、「アドミッション・ポリシー研究」の3つの取組だ。 探究学習「旭東アカデメイア」は、2015年度にスタートした当初は希望者のみの活動だったが、現在は総合的な探究の時間のなかで1、2年生全員が取り組んでいる。「なぜ学ぶのかを内省し、学びたいという動機や意欲をもって大学に進学してほしいという思いから始めた」と花尻先生は振り返る。1年次と2年次の後期に行っており、最初に「問題解決パラダイムワーク」と「価値創造パラダイムワーク」という、いわば「探究の手法」を学ぶ講義を実施。その後、生徒は自らの興味にしたがってテーマを設定し、探究していく。テーマに縛りはなく、活動は個人でもグループでもいい。半年間かけて探究した成果は、3月に発表する。過去には、「どんな教室であれば授業が楽しく受けられるか」をテーマに選び、探究する過程で大学での学びのヒントを得て、デザイン工学の分野に進んだ生徒もいるという。 旭東アカデメイアの目標は、「大いなる不完全燃焼」。「完全燃焼して満足すると、そこで完結してしまう。もうちょっとやりたかったな、もっと知りたいなと 創立117年の伝統校で、地域有数の進学校として知られ、旭川医科大学をはじめとした医学部や国公立大学の志願者も多い。以前は、多くの課題を課し、学力の高い生徒には偏差値の高い大学・学部を勧める指導が生徒を伸ばし、学習に積極的に向かい、がんばり切れる生徒が数多くいた。しかし、「生徒の気質が変化し、一生懸命に勉強して偏差値の高い大学に入る、ということに価値を見いだせず、それだけではがんばり切れない生徒が増えてきた。また、ミスマッチのために大学の学びについていけない卒業生の存在も課題だった」と、進路指導担当の花尻健明先生は言う。 こうした課題を解決するためには、具体的な進路選択をする高校2年の秋までに生徒の内発的動機をいかに高めるかが重要であると考え、2015年度に3つの取組をスタートさせた。興味のある課題について深く探究する「旭東アカデメイア」、ロールモデルから生き方を学び、自らの未来を描く「学びのフローラ」、そして、大学のアドミッション・ポリシーを読み込み志望校選択につなげる「アドミッション・ポリシー研究」だ。自分がやりたいことや興味の方向性を発見し、それを学べる進学先を探し出し、なぜそこを目指すのかという理由を明らかにしたうえで、受験勉強に励む。内発的動機を重視した進路指導への移行で、生徒の姿にも変化が見えてきた。旭川東高校(北海道・道立)取材・文/笹原風花大学372人、専門学校19人、その他81人大学進学者の約4割が国公立大学に進学している。かつては地元志向が強く道内の大学への進学者が多かったが、近年は全国へと広がりを見せている。1903年創立/普通科生徒数842人(男子424人・女子418人)進路をデザインする力を付け、なりたい自分を実現する「大いなる不完全燃焼」で学びへの動機や意欲を育む392019 DEC. Vol.430

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