キャリアガイダンスVol.430
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まとめ/長島佳子 撮影/高山尚樹星野 誠星野高校・星野学園中学校・星野学園小学校校長ほしの・まこと1938年生まれ。法政大学経済学部卒。創立者である祖母、前任校長である父から引き継ぐ命を受け、大学卒業後、星野学園に着任。1984年、系列の川越東高校校長就任、1986年星野女子高校校長就任、1995年学校法人星野学園理事長就任。現在は、星野学園中学校、小学校の校長も兼任。創立以来の全人教育をぶれずに貫きつつ、感度高く時代を先取りし、ICT教育や国際人教育に早くから取り組んできた。校長室にはほとんどおらず、職員室等の校内で現場の先生たちと語り合って、全校生徒一人ひとりの課題を把握しているという。「経営というよりは現場主義。自分は教師しかできない」と自らを語る。現在はさまざまな場面でリーダーとなっている50年前の教え子たちが、今も訪ねてきてくれるのが喜びと顔をほころばせる。 本校は明治30年(1897年)の創立以来、「習熟度別学習指導」「国際人教育」「情操教育」の三つの柱による教養教育を実践してきました。これは現在の大学入試改革が求めている「学力の3要素」「英語の4技能」「多面的評価」と一致しているもので、時代が本校の方針に追いついてきたと言っても過言ではないでしょう。 三つの柱の根底にあるのが、「生徒一人ひとり、全員が主役である」という想いです。個々の生徒にしかない能力を生徒自身が見出し、それを信じてチャレンジし続ける力を身に付けてほしいと考えているからです。高校とは生徒が等しく学べて、自己の土台を仕上げる基礎教育の場です。そのための環境を整えることが学校の役割です。 生徒なりの学びを得るために、現在では当たり前になっている「習熟度別学習指導」を創立時から行っています。学業以外でも自分の個性を発見できるよう、クラブ活動は戦後から全員参加としてきました。クラブ活動を活発に行うことで、自然と上下関係でコミュニケーションを取ることや、生徒同士で学ぶことが身に付いていきます。アクティブ・ラーニングという言葉ができる前から本校の生徒たちは共に学び、失敗しながらも課題に前向きに取り組む姿勢を育んでいます。 今では運動部、文化部とも全国大会常連の部が多数あり、全国優勝する生徒たちもいます。しかし、「全員が主役」の考え方から、校内で表彰はしますが、敢えて垂れ幕などは掲げていません。 IT教育にも早くから取り組み、2000年に1人1台ノートパソコンを持たせました。現在はタブレットを活用しています。 本校では生徒の誰もが自分の居場所をもてるよう、小学校の遊び場を始め、さまざまな施設を設けています。その一つが記念講堂内の大ホールです。県内有数の音響照明設備を誇り、授業や行事で人間国宝や文化勲章を受章した芸術家の方々などを招き、生徒たちに本物を見る機会を多く与えて豊かな感性を育んでいます。これらのことは、進路を考える際にも役立つ体験となっています。 こうした取り組みから、卒業時の生徒アンケートで、学校に対する満足度が非常に高いのが本校の特長です。3年間皆勤の生徒が毎年4割以上いるのも、生徒たちが自分の居場所として学校を捉えている表れでしょう。 現代は教員にとって大変な時代ですが、より良い社会をつくるために、未来の担い手である生徒たちを育てる学校や教員の役割が一層大きくなっています。教員のなり手がなくなれば国は滅びます。若い人にいきいきと働いてもらうためにも、リーダーが教員に対しても個々に備わった才能を見出し、導いていくことが必要ではないでしょうか。私自身も生涯教員でありたいと考えていますが、若い人がさまざまなことにチャレンジできる環境をつくっていくこともリーダーの役割と考えています。個々の生徒が自分の能力を発見しチャレンジし続ける力を育む若い教員がいきいきと働ける学校がより良い未来をつくる教育につながる1897年、前身である星野塾創立。2003年、星野女子高校から星野高校に改称し共学化。文武両道を目指し、毎年難関国公立・私立大学へ進学者を輩出するとともに、部活動でも多数のオリンピアンが育つほか、全国大会常連の運動部・文化部も多数。星野高校(埼玉・私立)自ら求めて学ぶ心を育み、自ら求めて学ぶ心を育み、一人ひとりが主役となれる一人ひとりが主役となれる環境を全生徒に提供する環境を全生徒に提供する432019 DEC. Vol.430

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