キャリアガイダンスVol.430
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462019 DEC. Vol.430生徒:成績が下がっちゃって、部活なんかしているからだって親が…。それで、いい加減、受験勉強に切り替えたほうがいいから、部活を辞めるように言われたんです。先生:一応、保護者会などでは、部活に入っている生徒は一時的に成績が下がっても、受験期になると切り替えて集中できるって説明したりしてるんだけどな。 生徒:そうなの? 私はあと半年で引退だし、ここまでがんばってきた仲間と一緒に引退したい。先生:その気持ち、親ともう少し話し合ってみたら?生徒:志望校調査なんだけど、どこを書けばいいのか相談したくて。特にこれといって勉強したいことがあるわけじゃないし。大学に行くのも、とりあえず進学しておいたほうがいいかなくらいだし。先生:将来やってみると面白そうと思う仕事や、興味のある職業とかはないのかな? 生徒:ああ、将来は安定した生活を送りたいから、公務員なんかはいいかなと思っている。だとしたら、やっぱり法学部?先生:そうだな。国公立の法学部あたりだと、まあ着実に勉強は活かせると思うよ。生徒:先生、どうしよう。この前の模試が悲惨で、このままだとまったく受かる気がしない…。 先生:でも、まだ冬休みがあるし、ここからの直前の追い込み次第というのも、実は結構あるよ。 生徒:だけど、浪人は絶対できないから。やっぱり、志望校のランク下げたほうがいいのかな? 先生:安易にランクを下げると、本来受かるはずのところまでダメになりがちだから要注意だぞ。生徒:じゃあ、同じ学校で学部・学科関係なく、片っ端から受けてみるとか?先生:入学後に勉強がつまらないってならないか?ケース1ケース2ケース3成績が下がり、保護者から部活を辞めるように迫られている2年生とりあえず将来は公務員かなと思い志望校選びを相談にきた2年生受験を目前にして成績が伸び悩み、受験校のランクを下げたいという3年生その場だけの意思決定ではなく連続的に継続して支えていく このように自分のやっていることを全否定されて困っている生徒の場合、意思決定のプロセスを支えてあげるような関わり、寄り添う姿勢がまず必要になります。意思決定する瞬間だけでなく、連続的にプロセス全体に関わることが大切でしょう。そこで、多くの先生がなさっているのは、まさにジェラットの連続的意思決定プロセスの流れです。データや資料を基に考えられる選択肢をできるだけ挙げて、それぞれの選択肢が自分にとってどのような価値があり、どんな結果が想定されるかを予測していく。教師は、生徒だけでは気づけない多くの客観的な事実やデータを示し、考える後押しをしたいところです。夢や希望を創造していけるような多くの可能性を示してあげる客観的なデータを多く示し一緒に意思決定プロセスをたどる ジェラットは、夢や希望・目標なども不変ではなく、創造的なものであると説きました。それと同時に、キャリアの意思決定では、夢をもつことの重要性も強調しています。「特にやりたいことがない」など立ち止まっている生徒には、自分なりの夢が抱けるような関わり方をしていくことが大切です。 例えば、これまでの学校生活でその生徒ががんばっていたことや、そこで発揮していた本人も気づいていないような力を示してあげて、それにつながる可能性をたくさん情報提供することも、生徒自身が納得して夢を選び取るための視野を広げる助けになるでしょう。 不安で身動きができない生徒には、一般論での励ましではなく、自分なりの目標設定と、意思決定のプロセスが大事です。そのためには、客観的な多くのデータも不可欠です。それは、ジェラットが指摘した、意思決定のステージにおける価値(評価)システムでの人間が陥りやすい「主観的可能性(自分の興味に関連していると望ましいものに思えてしまう)」に縛られないためにも必要です。とはいえ、焦っている生徒が自分でその客観的なデータを集めて検討するというのは、なかなか難しいのも事実です。そこで、教師がプロセスを示し、一緒にやってあげるという姿勢で関われるといいのではないでしょうか。

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