キャリアガイダンスVol.430
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472019 DEC. Vol.430生徒: 成績が下がっちゃって、部活なんかしているからだって 親が…。先生: 成績が下がったのを、部活のせいにされてしまったんだね。生徒: そうなんですよ。それに、いい加減、受験勉強に切り替 えたほうがいいから、部活を辞めるように言われて。先生: 部活を辞めれば、受験勉強に打ち込めるようになりそうかな?生徒: う~ん、どうかなあ…。せっかくみんなでがんばってきたし、 あと半年で引退だからみんなと一緒に引退したいし。先生: そうか。じゃあ、まずは、部活を続けた場合と辞めた場合の、それぞれメリット・デメリットをたくさん書き出したり、部活で本当に勉強時間がとれないのかどうか生活時間の見直しをしてみようか。あと、成績が落ちたというのは、具体的に何がどう落ちたのか、データを見てみよう。生徒:志望校調査なんだけど、どこを書けばいいのか相談したくて。 先生:何か漠然とでも、やってみたいことはあるの? 生徒:う~ん、特にこれといって勉強したいことがあるわけじゃないし。大学に行くのも、とりあえず進学しておいたほうがいいかなくらいだし。先生: 1年生の時、地域の商店街のイベントのお手伝いをク ラスでやって、一生懸命資料作りをしていたって聞い たけど?生徒: ああ、あれね。みんなでお祭りっぽくて楽しかった。先生: 修学旅行の前にも、事前調査をしっかりやっていたよね。生徒: 調査や情報収集したりするの、結構好きなんですよね。 生徒:先生、どうしよう。この前の模試が悲惨で、このままだとまったく受かる気がしない…。先生:模試の判定が悪くて不安になっているんだね。生徒:そう。勉強結構やっていたのに、合格判定が上がるどころか、下がってしまって。先生:勉強はかなりがんばってやっていたんだ。どんなふうに勉強していたの?生徒:平日は、毎日4時間くらいやって、休日は図書館で朝から夕方までがんばっていたけど…。先生:ちなみに、特に対策を意識していた教科や範囲はあるのかな?生徒:えっと~(と、対策についての具体的な話をしはじめる)<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス情報収集から意思決定を何度も繰り返す支援が大切『新版キャリアの心理学【第2版】 ―キャリア支援への発達的アプローチ』渡辺三枝子編・著 ナカニシヤ出版キャリアカウンセリングの基礎的な理論として、ジェラットを含め9人の代表的研究者の理論とその背景などを解説。 キャリアにおける意思決定は、一直線にスムーズに進むことはまずありえません。目標に向けて情報を収集し検討する中で、当初考えていたこととは異なる事実に直面したり、自分自身の思いも変化したり。そのたびごとに元に戻り、何度でも情報収集から繰り返す必要があります。社会の変化も激しい現代では、特にジェラットが唱えた積極的不確実性は大切な考え方になります。 そこで教師が果たす役割は、「決める」ことを急がせたり、決めた事実だけを受け取るのではなく、データをたくさん示しながら時には元に戻す役割を果たしたり、繰り返し試行錯誤することを怖がらなくてよいと一緒にプロセスをたどり、支援していくことです。 せっかく入った大学からドロップアウトしたり、働き始めてもすぐに辞めてしまったりするのは、この十分な意思決定のプロセスを踏むことなく決めたことも原因の一つといえます。進路探索の意思決定プロセスは、キャリア形成における6段階、①自己理解 ②職業理解 ③啓発的な経験 ④キャリア選択による意思決定 ⑤方策の実行 ⑥職業適応の、①から③の段階ともいえる重要な部分です。進路相談では、生徒が繰り返し考えられるような言葉かけを大切にしてもらいたいと思います。

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