キャリアガイダンスVol.430
50/66
502019 DEC. Vol.430 長崎県立諫早高校の生徒にインタビューすると、その圧倒的な主体性に驚かされる。「自分から勉強する」「わからないことがあれば質問する」といった狭い意味のものではない。問題意識をもって自ら立ち上がり、学校を飛び出して人とつながり活動し、うまくいかなくても仲間と対策を考え乗り越える――同校が目指し、実際に生徒のなかに育まれているのは、そんな、枠にとらわれず発揮される主体性だ。 このような生徒の姿は、かつての同校ではあまり見られなかったという。同校は県内有数の進学実績で知られる伝統校で、校是「文武両道」の下、生徒は勉強と部活動に一生懸命に取り組んできた。しかし、5年前に進路指導主事に就いた後田康蔵先生は、そこに物足りなさを感じていた。 「真面目だけれど指示待ちの傾向があり、学校の中で小さくまとまっている印象がありました。本校生徒たちはもっとできる。それぞれの力を存分に伸ばし、これからの社会で多様な人々と協働し新しい価値を生み出していくことができるようにしたい、と考えていました」 そんな同校が変わるきっかけとなったのは、2016年に進路指導部が始めた「グローバル講演会」だ。これまでにない形式にしようと、90分間の講演のあと、希望者対象に少人数グループの対話によってテーマを深める120分間のワールドカフェを行うという、二部構成で開催した。「グローバル」を同校は「多様性」と捉えており、グローバル講演会という名称には、世界で活躍する講師に学ぶことだけでなく、対話図2 活動の見直し基準● 主体的スタートで始まったか?● 選択の自由はあったか?● 機会を奪っていないか?● 生徒に時間を返しているか?● 多様性は確保しているか? →対話とシェア● 入念な計画(やりくり)を立てさせているか?● 大学合格することだけが目標になっていないか? →キャリア形成● 必要な失敗をさせているか?● 社会との関わりをもたせているか? →アウトソーシング● 机上の空論(理想論)で終わっていないか? →社会に有意な活動をしているか?早朝課外の廃止休日課外の軽減校外実力の軽減特別学習の自由化課題の精選学習合宿改革■希望者対象の活動の立ち上げグローバル講演会/東大寺子屋/医学部勉強会/ワールドカフェ■全員対象の活動の充実CDA学習/課題研究/Brush-upタイム(早朝15分)■PDCAツールの開発・活用志手帳/ポートフォリオ/ルーブリック評価図1 「主体性・コラボレーション・チャレンジ」に基づく活動の見直し県内屈指の進学校である諫早高校。受け身な面もあった生徒たちは今、校内外で活発に活動するようになり、文化祭や体育大会のような大きな学校行事も生徒の手によって生まれ変わりつつあります。こうした活動の根底にある主体性は、同校でどのように育まれるのでしょうか。取材・文/藤崎雅子発展途上にある若手社会人の講演会 多様性に出合う対話 生徒に時間を預けるアドミッション・ポリシー研究 PDCAツール 偏差値抜きのキャリア検討会 場つなぎ・人つなぎ生徒のもつ力を存分に引き出したい時間と機会を預ければ生徒は自ら伸びる
元のページ
../index.html#50