キャリアガイダンスVol.430
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人材に必要なのは、研究能力や論理的思考力だけでなく、表現力やコミュニケーション(ネットワーク)力、マネジメント力ではないか。生徒が主体となって企画運営を行えば、これからの社会に必要な力をさらに伸ばすことができるのではないか。そう考え第4回からは複数校の生徒による実行委員会を立ち上げた。 こうして情報交換だけでなく、協働と力の育成の場に成長したフォーラムは昨年度、「環境・防災地域実践活動高校生サミット」としてさらなる変化を遂げた。新たな方向性は、地域でのアクションを目指すということだ。 研究によって問題を適切に把握することはできるようになってきた。では、どう生かすのか。次のステップは「問題を解決するために、高校生が地域のさまざまな機関と連携して、地域で実際に『行動』『提言』『貢献』することだと考えました」とSSH研究推進部長の秋山 衛先生。このことは新学習指導要領に示されている「学びを人生や社会に生かそうとする、学びに向かう力・人間力の涵養」「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」とも通じると考えているそうだ。 折しも、同校の普通科看護医療・健康類型では、福祉や防災分野で地域での実践的な探究活動が始まっており、地震や豪雨による災害は社会的にも大きな関心事項となっている。そして、環境も防災も、多くの社会課題同様、自然科学だけでなく人間生活や経済など複数の視点をもたなければ解決できないという共通点がある。 アクションを促すため、高校生サミットでは事前に「地域探究スキルワークショップ」(下図)を実施した。参加生徒が地域課題解決のために何ができるのかを話し合い、活動を企画、自分たちの研究成果を生かして地域課題解決に貢献することを目指したのだ。 第1回サミットでの、国際探求科生徒の発表タイトルは「Let's walk together」。地域の外国人へのアンケートから見えた、防災知識と地域交流の不足という課題に対するアクションが紹介された。生徒が企画したイベント「あまおだ減災フェス」で防災クイズや図上避難訓練を行い、茶話会で交流を深めるというものだ(下図)。 看護医療・健康類型の生徒は災害時に自力で避難することが困難な高齢者や障害者の支援について探究した。小田地区に住む高齢者と街を歩き、災害時にそれぞれの方に必要な情報を盛り込んだ「地域防災・絆マップ」(下図)を作成し配布。また、福祉避難所を増やすために施設に依頼するといった活動を報告した。 SR科の3年生は「環境問題は大人たちだけでなく、高校生が考えることで幅が広がり、問題の解決方法がたくさん見つかるのではないか」と言う。入学時には環境問題にあまり興味がなかったという彼女は今、研究者として南極の海面上昇か海の富栄養化のどちらかに取り組みたいと考えているそうだ。 「問題の背景の考察を通して、教科で得た知識やいろいろな物事をつなげて考えることができるようになり、経験を通して深く広い視野を身に付けられるようになります。そのなかで、生徒たちにはやりたいことがだんだんと見えてくるのではないでしょうか」と秋山先生は語った。知と探究心が意識や行動を変える■ 地域探究スキルワークショップ2018■ 防災に関する取り組み第1回「課題を発見する」7/28(土)須磨水族園(神戸市)1.問題意識を共有する2.課題を発見する①データを元に(須磨海岸での実習・考察)3.課題を発見する②聞き取り(環境改善活動に取り組む方から)4.課題を発見する③自らの地域(各地域の課題と発見方法について議論)第2回「先進事例を研究する」9/1(土)三郎島漁協(岡山県)5.地域探究先進事例研究①(海での実習、先進高校事例についての講義)6.地域探究先進事例研究②(環境・防災の地域実践活動を行う高校の発表)7.先進研究に学ぶ(学んだことを各校でどう生かすか意見交換)第3回「発表方法や地域社会への貢献方法を学ぶ」10/28(日)人と防災未来センター(神戸市)8.効果的な発表・展示方法を知る(会場の施設見学で知識と表現を学ぶ)9.探究の方法について学ぶ(兵庫県立大学協力のミニ探究ワークショップ)10.課題研究を通した社会貢献の可能性を探る(生徒同士のディスカッション)SR科化学班の生徒と秋山 衛先生(サイエンスリサーチ科長、SSH研究推進部長)使う人1人ひとりにカスタマイズした地域防災・絆マップ第2回あまおだ減災フェスのチラシ572019 DEC. Vol.430

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