キャリアガイダンスVol.430
59/66
ードできない生徒会が悪い」「形だけの総合学習が悪い」「自由にさせてくれない先生が悪い」・・・。 その様子を遠巻きに眺めていたのは校長でした。その夜、本音を漏らしました。「結局あいつらは評論家なんじゃ。やりたいならやればいいんじゃ。なんでワシに言わんのんじゃ」。こういうときの広島弁は迫力があります。 最終日の朝、どうなるかなと見ていたら、生徒たちは自分たちだけで集まって議論を始めました。じゃあどうする? と。自分たちの高校を面白くするために、自分たちに何ができる? あれをしたい、これをしたい。そのプランを会の最後に発表したら、会場は大喝采! 教育者の想定を追い越して、めきめきと成長していく高校生たち。その姿は、私たちの胸を打ちました。 やがて、腕組みして眺めていた校長は、閉会挨拶を謝辞でしめくくった後、生徒に向き直ってこう語りました。 「君たち、わかるか? 物事にはコストというものがある。メリットがなければコストは支払えない。それをマネジメントすることもまた教育だ」。説教になりそうな切り出し方に、生徒たちはうつむきました。校長はまだ怒っているのかもしれません。外さんけえの」と語ったといいます。 フェリーで島に着いた私たちを待ち受けていたのは「みりょくゆうびん局」の高校生たち。その中に、ことねさんもいました。彼女たちの案内で、私たちは島をぐるりと見学し、海やブルーベリー畑を満喫しました。 翌日、高校生の司会でシンポジウムが始まりました。全国の先生方は教育実践を紹介し、悩みを語りました。高校をどう地域とつなぐか? 職員室をどう巻き込むか? 生徒たちをどう動かすか? 普段だったら、高校生を前にして話すような内容ではありません。 最初は様子をうかがっていたことねさんたちも、少しずつ関心を示し始めます。やはり自分たちが受けている教育に問題意識があるわけです。 ある先生が「タブレットを配っても生徒はすぐ遊び始める」と悩みを伝えると、そういう生徒がいるから困るよね、と共感しました。また別の先進校の事例を、うらやましそうに聞き入りました。 そこで私が「高校生の社会参画が日本の課題」「やらされ探究学習が広がっている」という問題意識を発表したものだから、ついに高校生たちは熱く語り始めました。 「自分たち高校生にはやりたいことくらいある、軽く見ないでほしい」。こうなると、もう止まりません。「授業がつまらないから悪い」「意識の低い生徒が悪い」「リ そして続けました。「お前らがやりたいなら、コストはワシがなんとかしちゃる。やり切れよ」。その目は「ハシゴは外さんけえの」と語っているように見えました。高校生たちから歓声があがり、取釜さんがこみ上げた涙を隠したことを、私は見逃しませんでした。 さて、あれから一年。彼女たちは一体どうしているでしょう? なんと宣言したとおりのプランをやり遂げて、この夏ついに学校紹介ムービーをYouTubeで公開。ディレクターをつとめたのがことねさんでした。想いが想いを引き寄せて、普段はできないドローン撮影も実現。海や空の美しさは必見です。 このように、本気でぶつかりあって生まれた言葉は行動につながります。大人たちの本気に子どもたちが巻き込まれ、子どもたちの探究心で大人との協働が深まっていく。その連鎖で織りなされる生態系こそが、社会に開かれた学校づくりの真骨頂なのです。 まだまだ紹介したい事例は山積みですが、この連載もあっという間に最終回。全5回の事例集は終わります。 これからも、探究をめぐる私の探究は終わりません。読者の先生方と、現場でお会いできることを楽しみにしています。きっとまたどこかで!自分だけのテーマを探究した高校生たちが集う全国最大級の「学びの祭典」。グランプリには文部科学大臣賞を授与。全国13地域+オンラインで開催!高校生の挑戦をお待ちしています。エントリー締切 12月15日(日)https://myprojects.jp/全国アワード参加者募集中高校生には行動する覚悟があるか?探究は連鎖し、学びの生態系をつくる学校の魅力を伝えるときには、ポスト姿になる制作した学校紹介動画「瀬戸内×青春」(YouTube)にはディレクターを務めたことねさんも出演島根県立津和野高校(当時)のげんたくん。全国高校生マイプロジェクトアワード2017でベストラーニング賞に輝いた広島県立大崎海星高校、みりょくゆうびん局で活躍することねさん生徒が地域の人たちと作った『島の仕事図鑑』■みりょくゆうびん局の活動■地域みらい留学生592019 DEC. Vol.430
元のページ
../index.html#59